第十四章・第七話「隠せない不安」
クロウからの連絡に、不穏なものを感じながらも、俺はその日の夕方、莉世と会う約束を守ることにした。すぐに詳細が分かるわけではないという連絡を受けていたからだ。
「蒼くん、お疲れ様」
待ち合わせ場所に現れた莉世は、いつもと変わらない笑顔を見せてくれた。だが、俺の表情から何かを感じ取ったのか、すぐに心配そうな顔になった。
「……何かあった?」
「いや、大丈夫だ」
俺はそう答えたが、莉世はすぐには納得しなかった。
「嘘。蒼くん、そういう時、分かりやすく目が泳ぐから」
図星を突かれ、俺は思わず苦笑した。莉世は、俺が思っている以上に、俺のことをよく見てくれている。
「実は、クロウさんたちの調査で、少し気になる動きがあったらしい。詳しいことは、まだ分からないんだけど」
「そっか」
莉世は神妙な顔で頷くと、俺の手をそっと握った。
「不安なことがあったら、ちゃんと教えて。一人で抱え込まれる方が、私は辛いから」
その言葉に、俺は改めて、自分がどれだけ莉世に支えられているかを実感した。
「ありがとう」
「それと――」
莉世は少し頬を赤らめながら、続けた。
「こういう時くらい、ちゃんと甘えてもいいんだよ。蒼くんは、いつも守る側に回ろうとするけど、私だって、頼られたら嬉しいの」
その不器用な優しさに、俺は思わず笑みをこぼした。
「分かった。頼りにしてる」
「うん、それでいいの」
莉世は満足げに笑うと、俺の肩に軽く寄りかかった。夕暮れの空の下、その温もりを感じながら、俺はしばらく、不安を忘れて穏やかな時間に身を委ねていた。
だが、ポケットの中のスマホは、まだ何も新しい連絡を告げてはいなかった。その沈黙が、かえって俺の中の緊張感を、静かに募らせ続けていた。
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