第十四章・第六話「東雲という男」
週明け、クロウから再び呼び出しがかかった。
「東雲について、かなり詳しいことが分かった」
本条のカフェ、テーブルに広げられた資料には、以前よりも格段に詳しい情報がまとめられていた。
「東雲は、ゲーム時代、巨大クラン『蒼穹』のマスターだった人物だ。クラン員数は、最盛期で三百人を超えてたらしい」
「三百人……それだけの規模を、一人で統率してたんですか」
「ああ。そして、その運営方針が、徹底した実力主義だった。成果を出せない者は容赦なく降格、あるいは追放。逆に、実力のある者には、惜しみなく支援を与える。そんな体制で、あのクランは運営されてた」
クロウがさらに言葉を続けた。
「総帥が語ってる思想――『強い者が世界を作り替えるべきだ』ってやつと、驚くほど一致してる」
その情報に、俺は確信を深めていた。
「現実での東雲の身元は?」
「そこが、まだはっきりしない。クラン運営時のハンドルネームと、実際の名前が、どうしても紐付かないんだ」
本条が、悔しそうに答えた。
「ただ、一つだけ気になる情報がある」
「何ですか」
「東雲が、かつて別のゲームでも、同じような実力主義のギルドを運営してたって話がある。そして、そのギルドの運営に、羽鳥蓮が関わってた形跡がある」
その言葉に、俺は思わず目を見開いた。
「蓮さんと、東雲が、以前から繋がってたってことですか」
「可能性は高い。もしそうなら、蓮が黒鴉に取り込まれた経緯も、より自然に説明がつく」
クロウが腕を組みながら言った。
「東雲という人物が、総帥である可能性は、かなり高くなってきた。あとは、現実での身元さえ割れれば――」
その言葉の途中で、クロウのスマホが鳴った。画面を確認したクロウの表情が、一瞬で強張る。
「どうしたんですか」
「……まずいな。情報屋から、妙な連絡が入った」
クロウの声には、これまでにない緊迫感が滲んでいた。
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