第十四章・第四話「突破口」
行き詰まっていた調査に、転機が訪れたのは、それから数日後のことだった。
「蒼、大きな進展があった」
本条からの連絡を受け、俺はすぐにカフェへと向かった。店内に入ると、クロウと本条が、これまでにないほど真剣な表情でテーブルを囲んでいた。
「何が分かったんですか」
「あの雑居ビルに関連する会社の登記情報を、別の伝手から入手できた」
本条がそう言いながら、一枚の書類を差し出す。そこには、聞き覚えのない会社名と、役員の名前がいくつか記載されていた。
「この中の一人が、怪しいんですか」
「ああ。この名前――『東雲』という人物、ゲーム時代に、かなり名の知れたクランマスターだった」
クロウが、その名前を指差しながら続けた。
「しかも、そのクランの運営方針が、総帥が語ってる思想とかなり近い。『実力主義による階層社会』を、クラン内で実践してたって噂もある」
その言葉に、俺は思わず身を乗り出した。
「じゃあ、この東雲って人物が……」
「断定はまだできない。だが、これまでで一番、可能性が高い人物だ」
本条が冷静にそう補足する。
「顔写真の方は?」
「今、入手を急いでる。ただ、この人物も相当用心深いらしく、公の場に姿を見せることは、ほとんどないようだ」
クロウが腕を組みながら言った。
「少しずつだが、確実に核心に近づいてきてる。お前にも、心の準備をしておいてほしい」
「はい」
俺は、静かに頷いた。総帥の正体に、いよいよ手が届きつつある。その事実に、緊張と、どこか安堵の入り混じった複雑な感情が、胸の内に広がっていた。
(あと少し、なのかもしれない)
そんな予感を抱きながら、俺はテーブルの上の資料を、もう一度じっと見つめた。
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