↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『アステリズム・オンライン 〜世界で唯一ゲームをラストクリアした俺、現実世界で正体を隠して無双する〜』  作者: かいばーく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/105

第十二章・第五話「差し伸べられた手」



 水無瀬蒼という名前を知ってから、羽鳥――玲は、独自にダンジョン攻略に力を入れるようになっていた。


(力をつければ、いつか奴に辿り着ける)


 そんな一心で、玲は危険な階層にも臆せず挑むようになっていった。周囲が止めるのも聞かず、放課後になると一人でダンジョンへ向かう日々。その甲斐もあって、気づけば校内でも噂になるほどの実力者になっていた。


 だが、どれだけ力をつけても、兄が失ったものが戻ってくるわけではない。攻略の成果を積み上げるたびに、玲の心にはむしろ、より深い虚しさが募っていった。強くなることと、兄を救うことは、決して同じ意味ではなかったからだ。


 虚しさを抱えたまま攻略を続けていた、ある日のことだった。


「――随分と、無茶な潜り方をするんだな」


 ダンジョンの奥、一人で上位モンスターに挑んでいた玲に、声をかけてきた人物がいた。


「あんたは……」


「名乗るほどの者じゃないさ。ただ、お前のその実力、もったいないと思ってね」


 物腰の柔らかい、だがどこか底知れない雰囲気を纏った男だった。年齢は、三十代半ばほどだろうか。着ている装備は決して派手ではないが、全身から滲み出る佇まいに、玲は本能的な警戒を覚えた。


「何が目的だ」


「目的、というほどのものでもない。ただ――お前と同じように、この世界の『理不尽』に、思うところがある者同士、話してみたいと思っただけさ」


 理不尽、という言葉に、玲は思わず反応してしまった。


「理不尽……?」


「ああ。努力を重ねてきた者が、たった一人のわがままで、すべてを奪われる。そんな理不尽が、まかり通っていいはずがない」


 男の言葉は、まるで玲の心の奥底を見透かしているかのようだった。


「お前も、そう思ってるんじゃないか。『ラストクリアラー』とやらに」


 その一言に、玲は思わず息を呑んだ。誰にも語ったことのない、心の奥底にしまい込んでいたはずの感情を、初対面の相手にあっさりと言い当てられた驚きと、同時に湧き上がる、奇妙な安堵があった。


「……なぜ、それを」


「噂は、色々耳に入ってくるものでね」


 男は薄く笑うと、懐から一枚の名刺のようなものを取り出した。そこには、組織名も肩書きもない、簡潔な連絡先だけが記されている。


「もし、その理不尽を正したいと思うなら――いつでも、連絡をくれ」


 男はそう言い残すと、闇の中へと姿を消していった。玲はしばらくその場に立ち尽くしたまま、手の中の紙切れを、じっと見つめ続けていた。


 誰にも理解されないと思っていた兄への想いと、晴らしようのない恨み。それを、初めて肯定してくれた相手。玲の中で、その存在は、気づけば大きな意味を持ち始めていた。


 ――それが、玲が『黒鴉』という組織と接点を持つことになった、最初の出来事だった。


【作者からのお願い】

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!

「アステリズム・オンラインの続きが気になる!」

「蒼のこれからの無双に期待!」

と少しでも思っていただけたら、画面下部にある

【ブックマーク登録】 と 【評価(☆☆☆☆☆を★★★★★に!)】

で応援していただけると、執筆のモチベーションが劇的に上がります!

皆様のポチッと一押しが、この物語の何よりの支えになります。よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。