第十一章・第一話「見舞い」
廃工場での一件から、数日が経った。
澪の力によって窮地は脱したものの、体に受けた傷までは消えてくれない。俺は医者に「念のため」と言われた通り、大人しく自宅で静養する日々を送っていた。
「――蒼くん、大丈夫?」
自室のベッドで横になっていると、控えめなノックの後、莉世が顔を出した。手には、見舞いの品らしき紙袋を提げている。
「莉世、来てくれたのか」
「当たり前でしょ。あんな怪我して、放っておけるわけない」
莉世はそう言いながら、部屋の中に入ってくる。少し緊張した面持ちで、ベッドの脇の椅子に腰掛けた。
「これ、果物。悠斗くんに聞いたら、蒼くん好きだって言ってたから」
「ありがとう」
差し出された紙袋を受け取りながら、俺は少し気恥ずかしさを覚えていた。莉世がこうして、わざわざ家まで来てくれたことが、素直に嬉しかった。
「体、本当に大丈夫なの?」
「ああ。もう痛みもほとんどない。医者には、念のためって言われてるだけだ」
「そう、ならよかった」
莉世はほっとしたように息を吐くと、少し俯いた。
「……あの時、本当に怖かった。蒼くんが、あんなにボロボロになってるの見て」
その声には、いつもの莉世らしくない、素直な弱さが滲んでいた。俺は少し驚きながらも、静かに言葉を返した。
「心配かけたな」
「うん。だから――」
莉世は顔を上げ、まっすぐに俺を見つめた。
「もう、無理はしないでね。私も、澪ちゃんも、悠斗くんも、亜衣も、みんな蒼くんのこと心配してるんだから」
その言葉に、俺は素直に頷いた。
「分かった。約束する」
窓から差し込む柔らかな午後の光の中、俺たちはしばらく、他愛のない会話を続けていた。
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