第十章・第二十話「覚醒」
「お兄ちゃん……!」
満身創痍で膝をつく蒼の姿に、澪の目から、涙が溢れ出した。
(お兄ちゃんが、私のせいで……)
自分が無茶な行動を起こしたばかりに、蒼がこんなにも傷ついている。その事実が、澪の胸を強く締め付けた。
(守られてばっかりで、いいの?私は)
悲しみと、それ以上の強い想いが、澪の中でせめぎ合う。蒼を助けたい。ただ、その一心だった。
(お願い、お兄ちゃんを――)
その瞬間、澪の体が、淡い光に包まれた。
「な、なに……!」
驚いたように後ずさる男。澪の周囲に、これまで見たことのない、柔らかな光の粒子が舞い始める。
澪の目の前に、見慣れないウィンドウが浮かび上がった。
〈水無瀬澪〉
〈Lv.1〉
〈ジョブ:巫女〉
〈スキル:慈愛の加護〉
自分でも理解が追いつかないまま、澪は無意識に、その力を手繰り寄せていた。
「――お兄ちゃんを、助けて」
そう呟いた瞬間、柔らかな光が、蒼の体を優しく包み込む。
光に触れた瞬間、蒼の体を蝕んでいた重い倦怠感が、嘘のように消えていった。
(これは……)
自分の体に走った変化に、思わず目を見開く。重く鈍っていた四肢が、瞬く間に本来の軽さを取り戻していく。『封印の呪符』による弱体化が、澪の光によって、完全に打ち消されていた。
「な、何をした……!」
動揺した声を上げる男。双剣を握り直しながら、静かに立ち上がる。
「――ありがとうな、澪」
小さくそう呟くと、フードの奥で、獰猛な笑みが浮かんだ。
封じられていた力が、今、完全に解き放たれようとしていた。
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