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『アステリズム・オンライン 〜世界で唯一ゲームをラストクリアした俺、現実世界で正体を隠して無双する〜』  作者: かいばーく


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第五章(前編)「ダンジョン、四人で」

休日の朝、待ち合わせ場所に指定されたのは、駅前に口を開けた「裂け目」――俗に言うダンジョンの入口だった。


「うわ、マジででかい……」


 悠斗が呆けたような声を漏らす。ビルとビルの隙間に、まるで異物のようにぽっかりと空いた漆黒の穴。近づくにつれ、空気そのものが変わっていくのが分かる。ひんやりと湿った、地下深くのような匂い。


「思ったより不気味だね」亜衣も、腕をさすりながら穴を覗き込んだ。「莉世、これ入って平気なやつ?」


「浅い階層なら大丈夫。モンスターも、そこまで強くないから」


 莉世が慣れた様子で答える。ダンジョン経験者ならではの余裕が、その口調から滲み出ていた。俺は少し離れた位置で、二人の様子を眺めながら装備を確認する。


「じゃあ、行くか」


 俺がそう言うと、悠斗が緊張と興奮の入り混じった顔で頷いた。


---


 入口をくぐった瞬間、悠斗と亜衣の体が、わずかにに淡く光った。


「――え、なに今の?」


 亜衣が驚いたように自分の両手をまじまじと見つめる。悠斗も同じように、戸惑いを隠せない様子で自分の体を見下ろしていた。


「多分、ステータスが発生したんだと思う」


 莉世が落ち着いた声で説明を始める。


「ゲーム未経験の人は、そもそもステータスってものを持ってないの。でも、ダンジョンに足を踏み入れると、新規でステータスとジョブが割り振られる。まだ何も育ってない、初期状態のものだけどね」


「え、じゃあ俺たちにも……」悠斗が目を輝かせる。「見方とか分かる?」


「『ステータス』って念じてみて。ウィンドウが浮かぶはずだから」


 悠斗が半信半疑な様子で目を閉じ、念じる。次の瞬間、彼の目の前に、薄く光る半透明のウィンドウが浮かび上がった。


〈田中悠斗〉

〈Lv.1〉

〈ジョブ:見習い戦士〉

〈HP:32/32 MP:8/8〉

〈STR:9 AGI:7 VIT:8 INT:4 LUK:6〉

〈スキル:なし〉


「うおおお、マジで出た!俺、見習い戦士だって!」


 悠斗が興奮した様子でウィンドウを指差す。亜衣も慌てて同じように念じると、彼女の前にも別のウィンドウが浮かんだ。


〈藤宮亜衣〉

〈Lv.1〉

〈ジョブ:見習い治癒師〉

〈HP:24/24 MP:20/20〉

〈STR:4 AGI:6 VIT:5 INT:10 LUK:7〉

〈スキル:なし〉


「私、治癒師なんだ……なんか、ちょっと嬉しいかも」


 亜衣が照れくさそうに笑う。俺はその光景を眺めながら、内心で小さく息をついていた。ジョブの割り振りはランダム性が強いと聞いていたが、こうして目の当たりにすると、改めて「現実がゲームに侵食されている」ことを実感させられる。


「ちなみに、この二人のステータス、どう見る?」


 莉世が俺に視線を向けてくる。俺は少し考えるふりをしながら答えた。


「良いと思う。見習い戦士は前衛向き、見習い治癒師は後方支援向き。バランスは取れてる方だ」


 実際のところ、初期ジョブとしては十分すぎる。もっとも、ステータスの数値だけを見れば、俺のそれとは比較にならないほど低い。だが、それを口にするつもりはなかった。


「よし、まずは軽く動いてみるか」


 俺がそう言うと、悠斗が待ってましたとばかりに頷いた。


「おう!俺、見習い戦士だし、なんか活躍できそうな気がしてきた!」


「調子に乗るのはまだ早い」


 莉世が苦笑しながら釘を刺す。俺たちは、浅い階層の通路の奥へと足を進めていった。


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