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『アステリズム・オンライン 〜世界で唯一ゲームをラストクリアした俺、現実世界で正体を隠して無双する〜』  作者: かいばーく


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第十章・第九話「澪の回想・少しずつ」



 最初の一年は、ぎこちない距離感のまま過ぎていった。


 蒼は相変わらず口数が少なく、澪とも必要以上に関わろうとはしなかった。だが、澪はそんな蒼の様子を、いつも横目でそっと窺っていた。


(何を考えてるのか、全然分からない)


 そんな澪の印象が変わり始めたのは、ある日の些細な出来事がきっかけだった。


 澪が学校で友人関係に悩み、部屋に閉じこもっていた時のことだ。ノックもなく、蒼がそっと部屋の前に飲み物を置いていったことがあった。


「……別に、気にしなくていいから」


 それだけ言って、蒼はすぐに立ち去っていった。だが、その不器用な気遣いに、澪は思わず涙をこぼしてしまった。


(この人、本当は優しいんだ)


 それから、澪は少しずつ、蒼に話しかけるようになった。最初は他愛のない世間話から。次第に、学校での出来事や、悩み事も話すようになっていった。


 蒼の返事は、いつも素っ気なかった。だが、それでも真剣に耳を傾けてくれていることだけは、澪にも伝わっていた。


「お兄ちゃんって、実はいい人だよね」


 ある日、澪がそう言うと、蒼は困ったような顔をしていた。


「……そうか?」


「うん。分かりにくいけど」


 澪がそう笑うと、蒼も僅かに口元を緩めた。


 時間をかけて、少しずつ、二人の間には確かな絆が育まれていった。血の繋がりはなくても、家族としての関係は、確実に築かれつつあった。


 最近では、蒼がふとした瞬間に見せる笑顔が、澪にとって何よりも嬉しいものになっていた。だからこそ――今回の一件で知った、蒼が抱えていた秘密の重さに、澪の心は静かに揺さぶられ始めていた。


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