第十章・第六話「対峙」
「妹に手を出すな」
俺の低い声に、二人の男が顔を見合わせた。
「へえ、これが噂の『ラストクリアラー』か。思ったより血の気が多いんだな」
青年が薄く笑いながら、じりじりと距離を詰めてくる。俺は澪を背に庇ったまま、腰の双剣に手をかけた。
「これ以上近づくなら、容赦しない」
「怖いなぁ。まあ、俺たちも別に、乱暴するつもりはなかったんだけどね」
青年はそう言いながら、両手を軽く上げてみせた。
「今日のところは、ちょっと話を聞きたかっただけなんだよ。妹さんに、さ」
「話を聞くのに、腕を掴む必要があるのか」
「まあ、多少強引だったのは認めるよ」
悪びれる様子もなく、青年は肩をすくめた。その態度に、俺の中の怒りが一段と膨れ上がる。
「――やっぱり、容赦する気はなくなった」
双剣を抜き放ち、俺は一歩踏み込んだ。青年の顔から、初めて余裕の色が消える。
「お、おい、待て――」
だが、俺は止まらなかった。瞬時に間合いを詰め、青年の得物を弾き飛ばす。もう一人の男が慌てて武器を構えようとしたが、それより早く、俺は鞘の腹でその腕を打ち据えた。
「ぐあっ……!」
二人はあっけなく地面に膝をついた。俺は双剣を構えたまま、静かに二人を見下ろす。
「今日のところは、これで見逃してやる。だが――」
俺は声を低くして続けた。
「次、俺の周りの人間に手を出したら、その時は容赦しない」
その言葉に、青年が悔しげに舌打ちする。
「……覚えとくよ。今日のところは、退散させてもらう」
二人はそう言い残すと、覚束ない足取りでその場を後にしていった。俺はその背中をしばらく睨んでいたが、やがて双剣を鞘に収め、澪の方を振り返った。
「澪、怪我は」
「な、ない……大丈夫」
澪は震える声でそう答えながら、俺の腕にしがみついてきた。俺はその小さな体を、そっと抱き寄せた。
「もう大丈夫だ。よく頑張ったな」
澪は何も言わず、ただ静かに肩を震わせていた。
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