第九章・第七話「共有される違和感」
莉世からの連絡を受け取ったのは、その日の夜のことだった。
『相談したいことがあるんだけど、今大丈夫?』
いつもより硬い文面に嫌な予感を覚えながら、電話をかける。
「どうした?」
「……昨日、変な人に声かけられた。蒼くんのこと、色々聞かれて」
莉世の話を聞きながら、次第に表情が険しくなっていくのが自分でも分かった。装備のこと、交友関係のこと――探られていた内容は、明らかに俺個人を狙ったものだ。
「亜衣も、同じ人に声かけられたって」
「亜衣もか……」
思わず奥歯を噛みしめる。黒鴉の動きが、いよいよ莉世たちにまで及び始めている。予想はしていたが、実際に起きるとなると、想像以上に胸の奥がざわついた。
「莉世、亜衣にも伝えてほしい。今後、一人で行動する時は、できるだけ気をつけてくれ」
「うん、分かった」
通話を終えた後、すぐにクロウへメッセージを送った。
『莉世と亜衣に、黒鴉らしき人物が接触してきたそうです。俺のことを探ってました』
返信は、思ったより早く届く。
『やっぱりそっちにも動きがあったか。こっちでも似たような報告が入ってる。想定より早いな』
『他にも?』
『詳しくは会って話す。明日、時間作れるか?』
『分かりました』
やり取りを終えて、スマホを机に置く。胸の奥に、じわりと焦燥感が広がっていった。
――守りたいものが増えるほど、狙われる隙も増えていく。頭では分かっていたつもりだったが、こうして現実に直面すると、その重みは想像以上だった。
その時、部屋の扉が控えめにノックされた。
「お兄ちゃん、まだ起きてる?」
澪の声だった。少し驚きながら、扉を開ける。
「どうした、こんな時間に」
「……ちょっと、話したいことがあって」
澪の表情には、いつもの明るさとは違う、かすかな不安の色が浮かんでいた。嫌な予感を覚えながら、俺は妹を部屋に招き入れた。
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