↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『アステリズム・オンライン 〜世界で唯一ゲームをラストクリアした俺、現実世界で正体を隠して無双する〜』  作者: かいばーく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/103

第三章「再会と違和感」

クロウから連絡が来たのは、莉世の書き込みから二日後のことだった。


『久しぶりだな。ちょっと話したいことがあるんだが、時間あるか?』


 ゲーム内チャットの延長で今も繋がっているメッセージアプリに、そんな一文が届く。俺――蒼は、少し身構えながら返信した。


『大丈夫です。何かありました?』


『会って話す。前に紹介したカフェ、覚えてるか?』


 覚えている。クロウのゲーム時代のクランメンバーの一人がオーナーをやっている店だ。以前にも何度か顔を出したことがあった。


---


 放課後、指定された時間にカフェへ向かうと、奥の席にクロウの姿があった。相変わらず、どこか飄々とした空気を纏っている。


「よう、久しぶりだな」


「お久しぶりです」


 向かいに腰を下ろすと、クロウはニヤリと笑ってスマホの画面をこちらに向けてきた。表示されていたのは、あの掲示板のスレッドだった。


「これ、お前だろ」


 ――やはり、この話か。


「……何のことだか」


「隠すなよ。黒ベースに金銀の装飾、双剣使い。お前以外に該当者いないだろ」


 言い逃れできる状況ではなかった。俺は小さくため息をついて、フードの下で表情を歪めた。


「……はい、俺です」


「だと思った」クロウは満足げに頷く。「助けた子、お前のこと探してるみたいだぞ。心当たりのある方は情報をくださいってさ」


「探されてる、って……」


 まさか、あの程度のことで詮索されるとは思っていなかった。俺は無意識に眉根が寄る。


「お礼が言いたいだけだろうけどな。まあ、お前は昔からそういうところ変わらないな。人助けはするくせに、名乗りもせず立ち去るところとか」


「別に、名乗る必要ないでしょう」


「相変わらずだなぁ、お前は」


 クロウは楽しそうに笑いながら、コーヒーを一口飲んだ。俺はその様子に、かすかな居心地の悪さを覚えながらも、どこかで安堵していた。ゲームが終わり、世界が変わっても、こうして軽口を叩き合える相手が残っていることに。


「まあ、あんまり大事にすんなよ。目立ちすぎると、面倒なことに巻き込まれるぞ」


「分かってます」


 短く答える。クロウの言葉には、いつも通りの茶化した口調の奥に、わずかな真剣さが滲んでいた。


---


 その日の放課後、俺は悠斗と一緒に駅前の商店街をぶらついていた。特に目的があるわけではない、いつも通りの時間の潰し方だ。


「なあ蒼、今度の連休さ――」


 悠斗の言葉が、不意に止まった。


「どうした?」


「いや、あそこ……」


 悠斗の視線の先を追うと、見覚えのある金髪の少女が立っていた。隣には、ショートヘアの快活そうな女子生徒。二人とも、こちらに気づいて驚いた表情を浮かべている。


「悠斗くん、久しぶり!」


 声を上げたのは、ショートヘアの少女――莉世の親友、亜衣だった。どうやら悠斗の知り合いらしい。


「亜衣!お前もこの辺来るんだな」


「莉世と買い物してて。ね、莉世」


 名前を呼ばれた莉世が、小さく頷く。俺はその顔を、フードなしで初めてはっきりと見た。ダンジョンで見たときよりも、表情が柔らかい。だが、こちらを見る目には、どこか探るような色があった。


「せっかくだし、みんなで少し遊んでいかない?」


 亜衣の提案に、悠斗が乗り気な様子で頷く。莉世は少し躊躇う素振りを見せたが、結局は流れに任せることにしたようだった。


 俺たちは特に予定もないまま、四人でゲームセンターやカフェを回りながら、放課後の時間を共にすることになった。


---


 夜、莉世は自室のベッドに寝転がりながら、亜衣に通話をかけていた。


「――今日の蒼くんって子、悠斗くんの親友なんだね」


「そうそう、いい子だよ。ちょっと素っ気ないけど」


「素っ気ない、か」


 莉世はその言葉を反芻しながら、ふと今日の会話の一場面を思い出していた。ゲームセンターで、誰かとぶつかりそうになった悠斗をとっさに引き止めたときの、蒼の低い声。


 ――「危ない」


 たった一言。だが、その声のトーンと間の取り方に、莉世は妙な既視感を覚えていた。


(似てる……気がする)


 あの夜、フードの奥から聞こえた声。素っ気なくて、でもどこか気遣うような響き。今日聞いた蒼の声と、どこか重なる部分がある気がしてならなかった。


「莉世?聞いてる?」


「あ、ごめん。聞いてる」


「どうしたの、ぼーっとして」


「ううん、何でもない」


 莉世は誤魔化すように答えたが、内心のモヤモヤは晴れなかった。確証があるわけではない。声が似ている、というだけの、あまりに曖昧な感覚だ。


 それでも、一度気になり始めると、頭から離れてくれない。


(考えすぎ、かな……)


 通話を終えた後も、莉世はしばらく天井を見つめたまま、その違和感を持て余していた。

コメント・フォローよろしくお願いします


コメント・フォローがくると頑張れます^_^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。