第八章・第四話「クロウの回想・始まり」
――今から、三年ほど前のことだ。
クロウがまだ『アステリズム・オンライン』を始めたて頃、彼は決して優れたプレイヤーではなかった。
むしろ、要領の悪い方だったと言ってもいい。強力な装備を持つプレイヤーたちが颯爽と高難度ダンジョンを攻略していく中、クロウは何度も同じ場所で足踏みし、心が折れかけていた。
「――このダンジョン、俺には無理なのかもな」
当時所属していたクランのメンバーにも、そう漏らしたことがある。だが、努力を怠っていたわけではない。仕事終わりの僅かな時間を削り、寝る間も惜しんでプレイに費やしていた。それでも、思うように結果が出ない日々が続いていた。
転機が訪れたのは、ある高難度クエストに挑んでいた時のことだった。
クロウのパーティが、格上のボスモンスターに苦戦し、壊滅寸前まで追い詰められていた。誰もが諦めかけたその瞬間――見知らぬプレイヤーが一人、颯爽と戦場に割り込んできた。
双剣を操り、瞬く間にボスの猛攻を捌いていくその姿は、まるで別次元の存在のようだった。
「――大丈夫か?態勢立て直せ」
そのプレイヤーの一言に、クロウたちは我に返り、なんとか体制を立て直すことができた。結果、そのクエストは辛くもクリアに成功した。
クエスト後、クロウは思わずそのプレイヤーに話しかけていた。
「助かった、本当にありがとう。あんた、相当な実力者だな」
「別に、大したことじゃない」
素っ気ない返事とともに名乗られた名前が、当時まだ駆け出しだった――蒼、だった。
それが、クロウと蒼の、最初の出会いだった。




