第七章(中編・一)「二人だけの時間」
週末、待ち合わせ場所に指定されたのは、駅前のショッピングモールだった。
「待った?」
現れた莉世は、私服姿だった。いつものダンジョン用の軽装とは違う、柔らかい色合いのワンピース。俺は一瞬、言葉を失いかけた。
「……いや、今来たところだ」
「そう。じゃあ、行こっか」
莉世は特に気にした様子もなく、先に立って歩き出す。俺はその背中を追いながら、内心で妙な緊張を感じていた。
装備店に着くと、莉世は真剣な表情で棚を見て回り始めた。
「私の短剣、そろそろ買い替えどきだと思うんだよね。蒼くん、どう思う?」
「見せてくれ」
莉世が差し出した短剣を、俺は手に取って確かめる。刃の摩耗具合、バランス、柄の握り心地――ゲーム時代の知識を頼りに、丁寧に見ていく。
「悪くはないが、そろそろ限界も近いな。もう少し攻撃力寄りのタイプに変えてもいいかもしれない」
「やっぱり?私もそう思ってたんだ」
莉世は嬉しそうに頷くと、新しい短剣を何本か手に取り、俺に見せてくる。真剣に相談し合いながら選ぶその時間は、思いのほか心地よかった。
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装備選びを終えた後、二人は近くのカフェに立ち寄った。
「今日、付き合ってくれてありがとう」
莉世が、飲み物を一口飲みながら言う。
「別に、大したことじゃない」
「また、それ言う」
莉世がくすりと笑う。俺は思わず視線を逸らした。
「……悪いか」
「ううん、蒼くんらしいなって」
窓の外を眺めながら、莉世がぽつりと続けた。
「あの夜、助けてもらってから、ずっと蒼くんのこと考えてた。どんな人なんだろうって」
「今は?」
俺が尋ねると、莉世は少し考えるような間を置いてから、答えた。
「思ってたより、ずっと不器用な人だと思う」
「……それは、褒めてるのか」
「褒めてるよ」
莉世はそう言って、柔らかく微笑んだ。俺はその笑顔から、思わず目を逸らせなくなっていた。
こんな時間が、これからも続けばいい――柄にもなく、俺はそんなことを思っていた。




