第六章・第四話「三ヶ月前のこと」
「……嘘。それって、私もやってたゲームじゃん」
莉世が思わず声を上げる。
「知ってる。莉世の進行度が八割くらいだって話も、掲示板で見た」
「え、それは……そう、だけど」
莉世が僅かに気まずそうな表情を浮かべる。俺は構わず話を続けた。
「運営が最後に用意した、真エンドコンテンツ。誰にもクリアできないと言われてたあれを、たまたま俺がクリアした。その瞬間、ゲームはサービス終了して、内容がそのまま現実に反映され始めた」
「装備は引き継がれて、レベルはリセット……それで、記憶だけは残る、ってこと?」莉世が確認するように言う。
「そうだ。ダンジョンも、モンスターも、転職システムも――全部、あのゲームの中身がそのまま、この世界に染み出してきてる」
「うわ、めっちゃSFじゃん……」悠斗が呆けたように呟いた。
「でも、なんで正体隠してたんだ?別に、隠す必要なくないか?」
悠斗の問いに、俺は少し言葉を選んだ。
「ゲーム名を公表してないから、俺が『ラストクリアした人間』だとは誰も気づいてない。それに――」
「それに?」
「ゲームの力を悪用してる連中がいる。闇ギルドとか呼ばれてる奴らだ。正体が知れたら、面倒なことになる可能性が高い」
その言葉に、テーブルの空気が僅かに張り詰めた。莉世の表情にも、緊張が走ったのが分かった。
「今日、莉世たちを襲った連中も、その闇ギルドの一味だ。俺を探るために、わざわざ上位モンスターを誘導してたらしい」
「それって……私たちも、危ないってこと?」亜衣が不安そうに尋ねる。
「今のところ、狙いは俺個人だと思う。だが、油断はできない」
俺がそう言うと、悠斗が神妙な顔で頷いた。
「分かった。まあ、事情は分かったよ。とりあえず――」
悠斗はそこで一度言葉を切ると、いつもの調子でにやりと笑った。
「蒼が凄い奴だってことは、よく分かった。それでいいじゃん」
その軽さに、俺は思わず肩の力が抜けるのを感じた。




