第十五章・第二話「小さな光」
練習を始めて一時間ほどが経った頃、澪の様子に、小さな変化が見え始めた。
「あ……」
澪の手のひらに、ごく淡い光の粒子が、ほんの一瞬だけ灯った。すぐに消えてしまったが、確かにそこには、力の片鱗があった。
「今の、見た?」
澪が興奮した様子で、こちらを振り返る。
「ああ、見えたぞ」
「莉世さん、今の――」
「うん、ちゃんと発動しかけてた。すごいよ、澪ちゃん」
莉世が、嬉しそうに拍手を送る。澪は照れくさそうにしながらも、満面の笑みを浮かべていた。
「もう一回、やってみます」
澪は再び目を閉じ、集中を始めた。先ほどよりも、幾分か落ち着いた様子だった。
「あの時の気持ち、思い出すんです。お兄ちゃんが傷ついてるのを見て、悲しくて、でもそれ以上に、助けたいって気持ちが強くて」
澪がそう呟きながら、再び精神を研ぎ澄ませていく。俺は、その言葉に、胸が熱くなるのを感じていた。
しばらくして、澪の手のひらに、今度ははっきりとした光が灯った。先ほどよりも強く、安定した輝きだった。
「できた……!」
「よくやったな、澪」
俺が声をかけると、澪は誇らしげに頷いた。
「これなら、いざという時にも、ちゃんと力を使えると思います」
「焦らず、少しずつ練習を重ねていこう」
莉世の言葉に、澪は元気よく頷いた。
練習を終えた後、三人でベンチに腰掛け、持参した飲み物で休憩を取った。
「澪ちゃん、本当にすごい成長だね」
「莉世さんのおかげです。教え方、すごく分かりやすくて」
二人のやり取りを眺めながら、俺は静かな満足感に包まれていた。守るべき相手が、自分の足で立ち、前に進もうとしている。その姿は、俺にとって何よりの励みだった。
夕暮れの光が、公園全体を優しく染めていく。この穏やかな時間の中に、確かな希望が、少しずつ芽生え始めていた。
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