30.二人三脚
「ぅ…いっ…たぁ…」
至る所から主張する痛みの刺激に目を覚ましたリィンは、埃っぽい空気と己の血の香りに眉を顰めながら身体を起こす。
ジャラリと鳴った音に視線を下げれば、両足首に趣味の悪い枷が嵌められているのがうっすら見えた。音の発生源は足と足の間を繋ぐ鎖のものだったらしい。おそらく後ろ手に拘束されている両手も同様だろう。
幸いと言っていいのか、ガッチリ拘束されているわけではなくある程度の自由は利きそうだ。両手はともかく、足の方はなんとか立てそうである。
「ひぃん…まさか過ぎる…!というか…」
どうしてこうなったのだったか。
混乱する頭を一度整理し、真面目に記憶を辿る。
(確か、そう…私達、変な集団に襲われて…っ)
ハッと改めて周囲を見渡す。急に動かしたせいか頭がギチっと痛んだ。
壁に掛けられた魔力灯でぼんやり写し出された周囲はゴツゴツしていて、音の反響的にも室内というより洞窟のような場所である。岩場エリアのどこかだろうか。
薄闇に目を凝らしてみてもリィン以外に人はおらず、ソキウスの姿もない。
(確か他の学生も捕まってたはず…ソキウス共々別の場所にいるのかな)
確かめるためにリィンが目を閉じようとしたその時、軽めの足音がして息を詰めた。
無意味とは思いつつ壁に背をつけてなるべく音の発生源から距離を取ろうとすると、鎖の音が聞こえたのか足音が早くなる。そして、魔力灯を手に現れたのは…
「あ、リィンさん…よかった…その、大丈夫?す、少しだけ…回復薬で…治療、した…けど…」
「…キブラ、くん」
柔らかく心配を宿した声に、けれども助けだとは思わなかった。
それは彼が気まずさと申し訳無さを前面に押し出した表情と、見覚えのある黒いローブとランタン型の魔力灯を携えていたから。
リィンはともかく、何故魔獣であるソキウスが連中の接近に気付かなかったのかと疑問ではあったが…蓋を開ければシンプルで残酷な真実である。
(何か盛られたかなぁ…)
リィンはため息を噛み潰し、代わりに頭を切り替えて喉を震わせた。今は悲嘆している場合ではない。
「…ここは、どこ?」
「ぁ…岩場のエリア、に…用意された…隠し部屋、だよ」
「そんなのあったんだ…」
「うん…リィン、さんが…その、蝙蝠型魔獣に…追われた所の、先に…」
ならばあの時キブラが助けてくれたのは、隠し部屋にリィンを近付かせない目的もあったのだろう。
何であれ、現在地が分かったのは僥倖だった。収納魔具こそ奪われているが、メモした内容はある程度頭に入っている。
こんな事を想定していた訳ではないが、やはりマッピングしておいて良かった。
「…ごめん」
「うーん…それは、何に対してかな」
「騙した、こと…その…サラダに…睡眠薬にもなる薬草を、混ぜたんだ。…魔獣にも、効くやつ…を」
「…ねぇ、聞いてもいい?どうしてこんな事をしたの、って」
「…ボク、は…ただ…」
居場所が欲しかっただけなのだとキブラは辿々しく呟く。
家にもスクールにも居場所のなかった彼がたまたま街中で出会った青年は、優しく頼りになる兄貴分のような男だった。
少し年の離れた友人として交流を深めていくうちに青年の仲間達とも仲良くなり、隠れ家も紹介してもらってそこに入り浸っていたという。
「居場所が、出来た…って、思ってた…けど…」
「…罠、だったんだね」
「…うん」
始めはちょっとした頼み事だった。荷物を届けるだとか、受け取るだとか、その程度の。
けれども頼み事はエスカレートしていき、とうとうキブラは自分が何をさせられていたのかを悟ったのだ。
しかし、その頃にはすでに遅かった。
"トモダチの…いや、仲間の頼み、聞いてくれるよなぁ?キブラ"
青年とその仲間が、紹介された隠れ家が…闇ギルドだと気付いたときにはもう、キブラは戻れないところまで浸かってしまっていたのである。
「その上…ボクの、契約魔獣…が、人質に…されて」
「…だからキミは、一度も呼ばなかったんだね。…呼べなかったんだね」
あれだけパートナーが好きだと言外に滲ませていたのに、キブラは一度もその存在を呼ぼうとはしなかった。それを察してリィンも無理に見せてとは言えなかったのだが…まさか、そんな胸糞悪い理由があったとは。亜空部屋ではない場所に囚われていたなら、そりゃ呼び出せるはずが無い。
「でも…闇ギルドに、手を…出した、のは…そもそもボク、だから…。居場所ほしさに、甘言に…惑わされて…それで、リィンさん、や…皆に…酷い事を…。…言い訳は、しない、よ…ボクは、ボクの意思で…協力、した…から…」
だからごめん、とキブラは繰り返す。
間違っていると分かっていても、今更反抗する気力はキブラにはなかった。一員として闇ギルドの恐ろしさを知ってしまったら、尚更である。
リィンは視線の合わないキブラをじっと見つめ、気になっていた事を尋ねた。
「えっと…そもそもどうして私達を狙ったの?」
「それは、ボクも…その、詳しくは…知らない、けど…」
正直答えは期待していなかったが、後ろめたさが口を軽くしたのだろう。それとも他の理由だろうか。
ともかく、意外にもキブラは知っている事を話してくれた。
曰く、リィン達を襲った闇ギルド…"黒衣の灯"は、主に人身売買と魔獣や精霊の非合法取引を生業にしてるギルドらしい。
依頼を受けてから動く事が多く、契約者を攫って無理矢理契約破棄をさせ、契約していた魔獣や精霊と人間…それぞれを売り捌くという。
尚、人間は"パーツ"に分けて取引する場合もある。もうこの時点でリィンはその悪辣さに頭痛が悪化した。何なら気持ち悪い。
「す、少し前に…依頼が、来た…んだ…」
内容は、ギルドの昇格試験に臨む活きのいい若者の融通。契約魔獣、契約精霊は要らないので好きにしていいとの話だ。
勿論闇ギルドに顔を晒すような相手ではなかったが、咳をしつつもどこか品のある老紳士の声だったらしい。
「さすがに…ギルドの、試験に…ちょっかいかけるなんて、リスクが…高すぎるって、断ってたみたいだけど…お膳立てはするから、どうかって…食い下が、られて…それで…」
「依頼を受けたんだね…」
「て、提示された…報酬が、良かったみたい…で」
その上、"お膳立て"も確かに完璧だった。
依頼人が提供した、試験会場の結界が一部不具合を起こしているという情報も、事前点検に繰り出される職員とその人数の情報も、すべて正しかったのである。
更に、他の闇ギルドの動きが活発化した事に伴ってギルドや警察、冒険者が出払い、試験周辺の警備が手薄になったという事まで重なれば…動かない理由が無かった。
リィンは未だにガンガンと痛む頭で思考を回す。
こうして聞く限り、あまりにも巧妙に仕組まれた襲撃だ。
(…そんなに欲しい何かが私達の中にあった?それとも…これすらもまた陽動…?)
インダスティオに入ってから一気に接近してきた闇ギルドという存在。昨日今日と誘拐に縁がありすぎるリィンだが、だからこそ何かが繋がりそうな気がした。
(ヨウちゃんと、学生…関わった闇ギルドは別だけど…どちらもシュヤマさんに帰結するんじゃ……ダメだ。パーツがたぶん足りてない)
ヨウちゃんだけならともかく、学生の件がシュヤマに帰結したところで、その先がどうも分からない。
普通に考えれば失脚を狙っているようにも見えるが…シュヤマがギルドマスターの地位に執着しているようには見えなかったので、意味は薄そうに思う。
リィンは答えの出ない思考を中断し、まだ会話をしてくれそうな様子のキブラに問いを紡いだ。今は憶測を組み立てるより、少しでも情報が欲しかったから。
「ソキウスと、他の皆は無事?」
「うん…怪我してる、のは…リィンさん、だけ…だから」
あくまで連中は契約破棄された後の魔獣にしか興味がないらしく、ソキウスは今のところ別の小部屋に檻ごと押し込められているだけとの事。
他の皆は一度吸い込めば丸一日は絶対に起きる事が出来ないという非合法の魔法薬で昏倒し、こちらもまた別の部屋で檻に入れられているらしい。
そもそも闇ギルドの一団は水辺の底に潜伏しており、学生なら安直に水辺を拠点にするだろうと予想して薬を散布したのだとか。泥濘にあった何かを引き摺った跡は連中のものだったらしい。
「だ、だから…その…リィンさんが、水辺を避けた、時…凄く、困った…んだ」
「あはは…なるほど」
暴行された時に聞こえた会話の意味が分かった。そして、一人別にされている理由も。
薬で唯一昏倒していないリィンが、万が一にも他の学生を起こしたり変な細工が出来ないように分けたのだろう。ついでに言えば…おそらく最初に何かされるターゲットもリィンだ。
「ちなみに、キブラくん。私を逃がしてくれるつもりはある?」
「…っ、ぼ、ボクには…リィンさん、を…助け、られない…。どうか…その、大人しくして、て…そう、すれば…これ以上の、乱暴は…」
「本気で言ってるなら怒るよ」
「っ」
ただ静かに、平たい声でリィンは返した。
大切な相棒たるソキウスと引き離されるという、彼女にとって最大級の乱暴ならもうされている。
その上、大人しくしていろと言うのは…大人しく契約破棄を受け入れて売られろという事だ。到底許せる話ではない。
「…そう、だよね…ごめん…でも、ボクは…リィンさんに、怪我して、欲しくない…から…それだけ」
今やっている酒盛りが終われば、"処置"が始まる。そう言い残して逃げるように立ち去った背中を見送ることなく、リィンは息を吐く。
情報は得た。やるべき事も定まった。それなら後は…動くだけだ。
「…やろう、ソキウス」
リィンは今度こそ目を瞑る。するとそこには瞼の裏の闇ではなく…"どこか別の空間と檻の柵"が見えたのである。
そう、リィンは連れ去られる直前魔石を砕いていた。
その魔石に込めた魔法式は…【感覚共有】。そしてあの瞬間ソキウスが魔法で繋いでくれたのは、"目"である。
つまりリィンとソキウスは今、目を閉じれば相手の視界が見れる状態なのだ。
「私達を引き離すなんて出来ないって、証明しよう」
言葉が届く必要はない。何故なら洞窟には停滞した魔力が固まって出来た魔石が小石のようにゴロゴロ転がっていて、契約者は魔法式に僅かとは言え思考を乗せられ、何よりリィンは…即座に魔法式を魔石に込め、使う事が出来るラントリイの子だ。
ならば、二人は今も、同じ場所にいる。
その辺に転がっている魔石を右手で砕く。
それはリィンとソキウスにしか出来ない反撃の狼煙だった。
…
「グルッ」
ソキウスはリィンの無事を喜びつつ、届いた魔法式と思いに応えて火炎の魔法を軽く放つ。
見張りの一人もいないので予想はしていたが、丈夫な檻は赤熱化も煤けもしなかった。
(でも、吸収する様子も弾く様子もない。魔力遮断の檻だったらどうしようかと思ってたけど…杞憂だったかな)
そもそもリィンは知らないが、魔力遮断の檻は持ち上げる事が不可能に近い。何せ、ただでさえ鉄の百倍以上重い鉱石で出来ている上、運ぶために魔法も魔道具も使えないからだ。そのため、備え付けが一般的なのである。豆知識。
(赤のダンジョンの時と同じ。無効化じゃないなら、どうとでもなる…でもまずは)
リィンは透明な魔石を探す。
魔石の色…属性は魔法式を込める人間側には関係ないが、受け入れる側には大きく関係する。
第一に、受け取りやすさ。当然、己の得意属性の魔石経由の方が受け取りやすい。人間の魔力に属性は無いが、契約紋が魔石を喰らう際にはその属性としてパスを通るので。
第二に、混乱防止。上記のように魔石の属性がそのまま反映されて届く都合上、"この魔法式はこの属性のですよ"とまず相手に伝わることとなる。その為、仮に火炎の魔法式を青の魔石に込めると、受け取る側は赤と青という二重の属性指定に混乱をきたすのだ。
ちなみに透明は属性という概念のない、強化や補助の魔法式に用いられる。
(あ、よかった…あった)
【索敵】
リィンが見つけた魔石に魔法式を込めて砕いた直後、ソキウスは魔法を使ってじっと相手の居場所を探り、視界を横に揺らした。近くには誰もいないらしい。
それならばとリィンは続いて赤の魔石を手に取り、魔法式と思念を込めて砕いた。
ソキウスの視界が上下に動く。任せろと頷いてくれているらしい。
そして、檻の角を小さな、けれども魔力をギュッと凝縮させた白い高温の火炎の魔法で炙った。
そのままじっと待つこと少し。
やがて檻の下から白煙が立ち昇るとズブと地面が溶けて沈み、しばらくして今度は耐性を持つはずの檻がドロリと溶けたのである。
そう、狙ったのは檻の更に下…地面の岩だ。
赤のダンジョンで会敵した陸巻貝型精霊を模した魔物の殻の時もそうだったが、耐性は無効化と違って属性がもたらす影響そのものは受ける。ただ耐えられる上限が普通より高いというだけなのだ。
つまりこの檻も、火で簡単には壊れずとも熱は持つ。
故にその熱は岩に伝わり、蓄積し、逃げ場のない熱で高温になった岩はやがてマグマに近いものとなった。そうすると今度は炎と地面という灼熱が檻を挟み、檻の熱がどこにも逃げられなくなった結果、蓄積されたエネルギーが耐性の限界を超えたのである。
「グルルゥ!」
ソキウスは得意気に鳴き、後は自慢の足で穴を蹴り広げて脱出した。
この手の魔道具は形状に大きな変化があると、掛かっていた魔法が消えるのだ。あらかじめ組み込まれた魔法というのは融通が利きにくいのである。
リィンは視界から消えた檻に一人ガッツポーズをした。
さすがソキウスは天才だと胸の内側で呟き、目を開ける。
ソキウスが自由になったなら、次は自分の番だ。
(よし!私はこの枷と鎖をなんとかしないと)
歩けなくはないが、リィンの運動神経では確実に転ぶ。そもそも、こんなものをつけて逃げてもすぐ捕まるのがオチだ。
さて、今この空間にはリィン以外に人はいない。
人はいないが…野生の精霊はずっといた。そもそもが住処なのだろう。
「こんばんは、岩喰栗鼠型精霊」
「キュッ?」
なるべく鎖の音を立てないよう気をつけながら、リィンは岩壁に穴を開けている精霊に声をかける。
茶鼠に焦茶の縞模様をもつシマリスのような精霊…ロシュルイユは、削り取った岩をさながらヒマワリの種でも齧るように軽々食べていた。
「お願いをしたいの。対価は私の魔力でどうかな?」
「キュキュ?…ンー……ンキュ!」
「あ、大丈夫そう。ふふっ、じゃあ前払いね」
手に魔力を集めてどうぞと差し出すと、ロシュルイユは手にしがみつくように魔力を吸い取り始める。ラントリイにいた頃は普通にやっていた、精霊との取引だ。勿論、リィン以外の民も普通にやる。
ベルセルとのやり取りを通し、カタルシアでは普通ではないと知ってからは控えていたが…誰も見ていないし良いだろう。
「というかキミ、結構欲張りだねぇ…魔力量が多くてよかった…」
「キュッ…プ」
「あはは…お腹いっぱいで何よりだよ。それでお願いなんだけど…この枷と鎖ってどうにか出来る?」
「キュキュー!」
お腹を擦りながら満足そうにケフケフしていたロシュルイユは、お安い御用だと言わんばかりに前歯を光らせる。
そして、あっという間に枷も鎖も噛み砕いてしまった。
どうやら、非力な学生と見て魔道具でも何でもない普通の金属素材の枷だったようだ。
「ありがとう、ロシュルイユ。助かったよ」
「キュキュ」
リィンが手を振れば、ロシュルイユもちまっこい手を振って穴の向こうに去っていく。
これで晴れて自由の身となったリィンは、ソキウスの視界を改めて確認した。
夜目が利くソキウスの視界に見えたのは、通路の奥に立つ一人の見張りと、その向こうに広がるどこか見覚えのある洞窟。ペルティリオに追われたあの洞窟だ。つまり、見張りが立っているのは隠し部屋とやらの出入り口なのだろう。
全然隠れていないレベルの出入り口だが、おそらく隠蔽の魔法か何かで外からは見えなくなっていたのだ。
(匂いのこもり方と魔力の淀み方から考えると、多分私は隠し部屋の中でも奥の方にいるはず。それに凄いお酒の匂いと声が…)
キブラは闇ギルドの連中が酒盛りしていると言っていたので、おそらく匂いの先は宴会場なのだろう。
リィンは慎重に足を進め、自分のいた小部屋の周囲を見渡した。どうやら見張りはいないらしい。
枷と鎖の件といい、非力な小娘と随分甘く見てくれているようだ。
ありがたい慢心である。
ヨレヨレになってしまった白衣を整え、試しに宴会場だろう方角の逆に進んでみる。するとすぐ、突き当たりの大きな部屋があり、そこに置かれた檻と中に倒れている学生達が見えた。数人の見張りはいるが、寝ぼけ眼をこすりながら欠伸をこぼしている。
(…多分、皆はこのままの方が安全だよね。位置関係が悪すぎるし)
リィンが頭の中で整理した限り、おそらく位置関係は出入り口側からソキウス、宴会場、リィン、学生達だ。
逃げるにしても必ず宴会場を通らなければならない。
当然ながらリィンに連中を倒す事は出来ないし、ソキウスに頼むには相手が多すぎる。何より、洞窟と火は相性が悪いのだ。
(…いや、でも、そっか…逆に考えれば…あそこを使えば、いけるのかも)
一つリィンに連中を無力化する策が浮かぶ。
ただ、かなり博打要素が大きいというか…ちょっと勝算が低いのが問題だが。
「…え、な、何で…」
「あ」
聞こえた声に慌てて振り返った。リィンのいつもの悪癖で、思考にのめり込んでいたらしい。
見れば、驚愕をあらわにしたキブラがそこにいた。手には…何故か、鍵束を持って。
「キブラくん…これは、そのぅ…」
「…やっぱり、リィンさん、は…凄いや。…結局…ボク、じゃ…役立たず、だね…」
「え、待って、もしかしてそれ…私の為に?」
キブラは気まずそうに鍵束を隠す。リィンを助けられないと言っておきながら、彼の行動は完全に矛盾していた。
実は、一番困惑しているのはキブラだ。何故自分が危険を冒そうとしているのか分からない。分からないが…
「ふふっ、ありがとうキブラくん」
「………」
飲みの席で聞く下卑た話。何年もの付き合いで慣れたはずのそれに嫌気がさして、リィンとの一日にも満たない時間を思い出して…そっちが良いと思ってしまった彼の負け。
鍵当番から盗んだ鍵束が…彼の心の答えだ。
「どう、するつもり…なの?ボクなんか、に…出来る事は…ある?信用、ないかも…だけど」
「え、あるある!凄くあるけど…でも、えっと…キミは大丈夫なの?」
「大丈夫…その、ボク…」
続く言葉が見つからないキブラにニッと笑みを向け、リィンは鍵束を握り締めていた彼の手を取った。
「なら、助けて欲しい!」
「っ!?」
その言葉は、キブラにとって何よりも特攻だったのだとリィンは知らない。
真っ赤になった彼の事をそっちのけで、ソキウスに作戦を伝えるために魔石を探していたから。
…
「んぁ?おー、キブラぁ、どこ行ってたんだ?」
「早く食わねぇとツマミ無くなんぞぉ…」
「あ、あの…実は…っ、来て」
「ひゃわっ!?」
酒盛りの席に戻ったキブラがグイッと引き倒した何かが、べしょりと転ぶ。闇ギルドの面々がなんだなんだと赤ら顔で見てみれば、唯一薬から逃れた一人の女子学生が自由の身でそこにいた。
「あ?テメェ、キブラ…どういう事だこりゃ」
「ぼ、ボクじゃ、ない…自分で、抜けて…彷徨いて、た…」
「あー、そういや普通の鎖使ってたもんなぁ」
「ヒャヒャヒャ!お転婆ちゃんでちゅねー」
「むぅ…!」
軽薄そうな男の片手で頬をむんずと掴まれ、女子学生は口を尖らせる。中々にそそる表情で、周りからヒュウヒュウと野次が飛んだ。
「で、捕まえてここに連れてきたって?なんで?仕置きにマワすのか?」
「…"狩り"を、しようと…思って」
「お?まさかあのキブラが?」
「…どういう風の吹き回しだ?お前、嫌いだろアレ」
らしくない行動に、何人かが怪訝な目を向ける。
しかしキブラはゴクリとつばを飲み込み、いつも通りオドオドと、辿々しく口を開いた。
「…その、ぼ、ボク…コイツに、あの…酷い事、言われた…嫌いって…な、仲良く出来ると…思って、たのに!」
「ぎゃはははは!なにそれ傑作じゃん!」
「裏切ったのお前なのに逆恨みぃー!だははは」
「やー、お前も染まってきたかぁ…いや、もしかして…その子の事好きだったとか?」
「愛と憎しみは紙一重ってか!」
パンッとひときわ大きな柏手が聞こえ、喧騒が止む。
見れば、ガタイの良い男が厭らしい笑みを浮かべてキブラと女子学生を見ていた。
「良いじゃねぇか、酒のツマミだ」
「さっすが兄貴ぃー!」
「つっても鈍臭そうだし、あんま楽しめないかもな」
「むっ!失礼ですよ!事実ですけど!」
「ぎゃははは!活きは良いねぇ!」
「おいガキ」
ガタイの良い男がジョッキを置き、女子学生の顎を掴んで持ち上げる。ただし、ロマンチックなそれではなくかなり乱暴な手つきで、だ。
「そのガッツに免じて逃がしてやる。ただし、俺達に捕まったら負けだ」
「っ、随分、甘いんですね!闇ギルドって」
「はははっ!吠えてろ、ガキが。負けた後の地獄に期待しな。十秒待ってやる。せいぜい逃げ切って見せろ、よ!」
「うぐっ!」
肩を押されて尻餅をついた女子学生は、もたもたと鈍い動きで立ち上がり、真っ直ぐ酒盛りの会場から出ていった。その背にいーち、にー、さーんと無慈悲なカウントダウンが響く。
そして十秒は早くも訪れた。
「ほらほら、そんなんじゃ捕まえちまうぞー?」
「逃げろ逃げろー」
「逃げて逃げて逃げて逃げて、んで、絶望しろや」
「その顔見て飲む酒が美味いんだからよぉ!」
女子学生が必死で逃げる後ろを、男達がわざと遅く、しかし一定の距離で追い回す。
これは"狩り"だ。獲物を甚振り、狩られる側だと知らしめ、気力をへし折るギルドの遊び。
「ぎゃははは!ホントどんくせぇー!はーいとうせんぼー」
「っ!?くっ」
「おーおー、次はどこに逃げるかねぇ?」
「上手く行けば誰かが助けてくれるかもなぁ?」
「偽物の映像と、バイタルチェックと位置情報の改竄にギルドが気付けば、だがな?だはははは!」
「ほーんと、こんな事出来る依頼主とかやばやばだよな」
洞窟を抜け、そのまま岩場を抜けようとすると邪魔をされ、広い場所には出さないようにとじわじわじわじわと距離を詰められながら追いかけられる女子学生は、既に息が上がっていた。
それでも諦めない目に、男達の嗜虐心が刺激される。
そして、長いような短いような追いかけっこの末…彼女は一つの洞窟に入った。
そこは完全な袋小路。闇ギルドの面々は酒を片手に武器をちらつかせ、逃げ場を失った憐れな獲物を嗤う。
「残念でしたぁ」
「思ったよりは粘ったなー?」
「さ、ゲームオーバー…っておいおい、まぁだ頑張るの?」
「やっば、あの子最高に憐れで可愛いんだけどー」
「おーい、そんな岩に登っても無駄だぞー!」
女子学生は破れかぶれなのか、洞窟の中に数多ある石柱の低い所から高い所へと必死で飛び乗って行く。そして、一番高い所まで登って、彼女は…リィンは笑った。
疲労で気怠げな目元を緩め、上気した頬を染め、生物の本能がゾクリと震えるような笑みで。
「どうして、この洞窟…何もいないのか、分かりますか?」
問に答えは求めなかった。リィンはすぐさま隠し持っていた赤の魔石を思い切り魔力を込めて砕き…それに応えたソキウスが特大の火炎を、出入り口を塞ぐように燃やしたのである。
「かはっ…!?」
「なん………っ…」
言葉にすればそれだけだが、効果は覿面で…リィンを囲んでいた闇ギルドの男達は、何が起こったのかも分からないまま喉を掻きむしり、全員が意識を刈り取られたのだった。
「……うっ、ソキウス!!」
「グルルッ!!」
それを見届け、口をおさえながら眉を寄せていたリィンは跳んできたソキウスに抱きかかえられてすぐさま洞窟を出る。
そのまま離れていた分を埋めるように、二人はギュムギュムと抱きしめ合った。
「ぅえぇぇぇぇ…!こ、怖かったし、疲れたよぅーー!あと頭痛いぃぃーーー!」
「グルッ!グルールゥ!!」
「ソキウス天才!タイミング完璧!!もうヤダ愛してるよ相棒ぅぅぅ!!」
「グールルルゥー!!」
「う、嘘…まさか、本当に…成功する、なんて…」
「ぬぼぼー」
傍らにどさくさに紛れて解放したパートナー…森鯰型魔獣と、見張りとして残っていた数人を茨の魔法で縛って転がしたキブラが呆然と呟く。
今まで自分が恐れていた大人達がこうもあっさり無力化されるなど、夢にも思わなかった。
「終わっ…た…んだ」
「ばっきゃもーーん!!ここで油断する奴があるかァ!!」
スコーンと鐘で殴りつけるような怒声と共に降ってきた巨大な両刃斧が地面を割り、いつの間にか一人起きて迫って来ていたガタイの良い男を吹き飛ばす。
リィンとキブラがポカンとしている間に大勢のギルド職員や冒険者がなだれ込み、キブラが捕まえていた連中や未だ気を失っている連中を捕縛…
「っあ、あー!待ってください!洞窟の中はまだ危険で…あぅ…」
「ちょ…リィン、さん…そんな状態で、大きい声…ダメ…」
「なんじゃァ?なーにを騒いどる」
ドスドスと足音荒くリィンを覗き込んだのは、シュヤマだった。
ドッと押し寄せてきた安堵で崩れ落ちそうになったが、リィンはキュッと眉を寄せてこらえて口を開く。
「あの、今洞窟の中に入ると皆さんも気を失うかもしれないので、作業するならせめて高いところから…んぇ?あれ?」
「グルゥ!?」
「いやお前さん自分の心配をせィ!!頭から血ィ出とるぞ!?おい医者ァ呼べ医者ァ!!」
「や、呼ばれてないけど飛び出してきたお兄さんだよ。ほら触らない触らない。気分は?気持ち悪さとかある?」
「って誰じゃお前ェ!?!?」
「クロマさん…???」
「や、また会ったねお嬢さん。その通り僕だよ、クロマお兄さんだよ」
シュヤマはひくりと口端を震わせた。
医者を呼んだはずなのに、よく分からない怪しさ満載な男が出てきたのだから、さもありなん。
ただ、リィンの知り合いらしいのでつまみ出すのは踏み止まった。
「クロマさん、どうしてここに…?」
「お嬢さんの試験を観るために来ちゃった…んだけど、なんだか大変な事になってたみたいだね?こっそり入ってみたら色々な意味でビックリしちゃった。闇ギルドの連中が彷徨いてるのもだし、セキュリティの低さにもね。その気になれば重要資料とか持ち出し放題だよ…ははっ」
「こいつ…いけしゃあしゃあと…」
「それよりお嬢さん、体調は?」
「ちょっと…グラグラ、チカチカ、してます…」
「うんうん、頭の怪我に、出血…極度の緊張状態から一気に気が緩んだせいもあるかな。ありゃ、もしかして捻挫もしてる?他にもありそうだけど…取り敢えず回復薬飲もうか」
「なんじゃお前さん、本当に医者なのか?」
「ただの宿屋のお兄さんだよ。ほら、宿屋で体調が悪くなったりするお客もいるからね。ほどほどに勉強しているよ。それに医学知識って色々と役に立つものだからね。色々と…ははっ」
クロマにドン引きしているシュヤマは置いておくとして、リィンは回復薬のおかげでようやく引いた痛みに肩の力を抜く。すかさずソキウスが支えてくれて、嬉しさで口元が緩んだ。
そんな彼女に、シュヤマはガバっと頭を下げた。否、もはや膝をつき拳を地面に立て、土下座に近い状態である。
「すまんかった!!!」
「え、え…?」
「ギルドの不手際で、闇ギルドなんぞの侵入を許したのみならず…こんな事になるまで気付けんかったわィ!」
「うんうん、様子がおかしいと思った僕がわざと警報鳴らしてあげてようやく気付くとか、職務怠慢も甚だしいよね。危うくお兄さんの大事な推しが損なわれていたと思うと腸が煮え繰り返りそうな思いだよ。ね、お嬢さん」
「いや私は別に…」
「なァに言っとる!!怒るべき所じゃろォが!!そこの何某が言っとるのはぐうの音も出ん正論なんじゃぞ!?」
「ひぃん!?」
「ははっ…ギルドマスターが怒ってどうするんだろうね」
困り顔のリィンを余所に、状況は目まぐるしく変わっていった。闇ギルドの面々は全員捕らえられ、隠し洞窟から学生達も助け出される。未だ薬のせいで眠ったままだが、解毒剤があるので問題はないそうだ。
おそらく皆は襲撃された事さえ知らないだろうから、心のダメージも問題ないだろう。
そうなるとやはり、皆の目は一人傷だらけなリィンに向くのは必然だった。
いや、もう一人目立つ者はいるか。
「ところでこっちの少年は誰かな?場合によっては始末するけど」
「お前ェが言うなっちゅう話じゃが…ふむ。何でお前さん、その格好をしとるんじゃ」
「っ…!」
「ぬぼ」
大鎌を取り出したクロマと冷ややかなシュヤマの視線に、キブラは身を包んでいた黒衣を握り締めて爪を立てた。うっかり忘れていたが、ギルドのマークが入った黒衣は、メンバーの証だ。
「ぼ、ボク…は…」
「もう!何言ってるんですか二人とも!どう見ても"あれ"ですよ!」
「「"あれ"?」」
「えぇ、あれです!!事実、キブラくんのおかげで私は助かったんですよ?」
「え、と…リィン、さん…?」
「ガハハハハ!そうかィ!あれじゃな、あれ!そういう事にしておくぞい」
「まぁ、ギリギリ間に合わなかったお兄さん達がとやかく言えることじゃないかな。お嬢さんがそれで良いなら」
皆の気遣いに気付き、キブラは捨てるようにローブを脱ぐ。それでもう、何も残らない。
あまりにも軽くて、泣きそうだった。ヘルビシルルスがそのローブを踏み潰し、キブラに身体を擦り付ける。
そこにいたのはもう、ただの魔獣と仲がいい男子学生だ。
「それで…すまんが、何があったか聞いても良いかのォ」
「勿論です!えっとですね…」
リィンは自分だけ何故昏倒していなかったのかという事から、キブラから聞いた連中の目的、依頼主の存在、それと依頼主とやらが行ったらしい工作の数々を。
当然ながらシュヤマはとんでもなく険しい顔をして、ガリガリと頭を掻いた。
「かーっ!何なんじゃ一体…!騒ぎを起こしよった他の闇ギルドも誰かの依頼で煽られとったっちゅうしのォ」
「なら答えは明白じゃない。一連の騒動はその"依頼主"の手のひらの上って事。いやぁ、僕好みの手腕だけど、僕ならもっと上手くやる自信があるかな…ははっ」
「おい、コイツ本当に味方なんじゃよなァ?」
「黒幕のクロマさんはいつもこんな感じですけど、私達に害はないので大丈夫ですよ」
「グゥルー」
「あ、うん…リィン、さん…"には"…か…」
「ぬぼぼ」
「やだなぁ、僕はただの宿屋のお兄さんなのに。ところで、お兄さんはお嬢さんがどうやって連中を無力化したのか気になっちゃうな」
「んえ?」
クロマの言葉に、シュヤマもキブラも食い付いてリィンを見る。褒めるような言葉は使いたくないが、今回の"黒衣の灯"の実動隊は決して弱くも愚かでもない。魔道武具や魔道具の扱いはハイランクの冒険者に引けを取らないし、契約している魔獣や精霊による魔法の実力だってそれなりにある。
まぁ、だからこそリィンにしてやられたのだが。もし彼女が隠れた実力者だったり力を誤魔化していたなら、闇ギルドの連中は勘付いただろう。勘付いて、警戒したはずだ。
でも、リィンは正真正銘、最初から最後までみっちり"弱者"であった。
「えっと…あの洞窟、昼間見た時から気になってたんです。凄く過ごしやすそうに見えるのに、何もいなかったので」
「あ、た…確かに、その…気にしてた…ね」
「まァ…あのくらいの穴蔵を好む魔獣は多そうじゃわィ」
「そうじゃなくても一時的に休憩に使っていても良さそうなものだよね」
「自然の世界の物事には必ず理由があります。それで考えてみて…もしかしたら、目には見えないけど危険な"何か"があるのかもって思ったんです。例えば…」
リィンは何もない空中を掴んで、パッと手のひらを広げる。当然そこには何もないが、クロマは眉を片方上げて口を面白そうに歪めた。
「空気、いやガスか何かかな?」
「ガス…?そ、そんな…匂いは、しなかった…ような…」
「匂いはしないよ。普段私達も普通に吸ってるものだもん」
その名は二酸化炭素。
普段は空気中に混ざっているが、その実空気よりも重いそれは、呼吸や燃焼などで酸素が消費されると生まれる気体だ。通常なら無害だが、高濃度になると意識障害を引き起こす中毒症状を発生させるので危険である。
「あの洞窟は奥に行くほど下りになっていて、他の横穴もありませんでした。つまり…そういったものが溜まりやすい場所だったんじゃないかな、と」
「だから生き物は本能的に危険を察知して寄り付かない、か。うんうん、お嬢さんホント痺れるくらい頭が良いよね」
「だ、だから…あそこに、誘い込んだ…んだ…"狩り"を、利用して…」
「えへへ、キブラくんに聞いた時これだ!って思ったよ。私がただ逃げた所でどれだけ釣れるか賭けだったし…そもそも普通に捕まりそうで勝算低かったから…」
「んで、誘い込んだ挙句…契約魔獣に火を使わせてその、なんちゃらの濃度を上げたってわけじゃな?」
「はい!」
魔法の炎は魔力が燃えたものだが、火が燃えるにはそもそも酸素がいる。魔法だろうがそこに例外はなく、故にソキウスの一撃はあの洞窟の二酸化炭素濃度を上げるには十分だった。
「名付けて、えっと、窮鼠猫を噛む的な作戦です!…って、あの、どうしましたクロマさん?震えてますけど」
「可愛いお顔で計算高すぎる推しに胸が高鳴って身悶えしながら転がりまわりたいお兄さんと、推しに変な人って思われないために平静を装って頼れる大人ムーブしていたいお兄さんが同居して混乱しているよ」
「片方のお兄さんは既に退居されているのでは?」
「ガハハハ!なんじゃもう、凄すぎてわけわからんわィ!お前さんとんでもねェなァ!!」
「んきゅ!?」
シュヤマの大きな手がリィンの頭にボスンと乗る。乗せた動きは些か乱暴だったが、右に左にと撫でる動きは丁寧で、孫を可愛がっている祖父としての彼が滲んでいた。
「まったく…ただの鈍らかと思いきや、とんだ玉鋼じゃねェか。よし!お前さん、合格じゃ!」
「合格…?」
「グゥル?」
「なんじゃお前さん忘れとったのか?こいつァ昇格試験じゃぞ」
「え?え?でも三日間のサバイバル…」
「ばっきゃもん!サバイバルより過酷な状況下を乗り切っておいて何言っとるんじゃわィ!しかもちゃっかり戦果まであげおってからに…詰めは甘ェがな」
「乗り切った…そっか、そうですよね…」
ふとリィンは、ストンと胸に落ちたものを飲み込む。
抱き締めてくれているソキウスの大きな腕を宝物のように撫で、顔を上げた彼女は…
「私達、乗り切ったんだぁ…!」
星をこれでもかと散らした夜空の如く瞳を煌めかせ、欲しいものを手に入れた子供のようにへにゃりと笑ったのだった。
「ソキウス!ソキウス!!私達はやっぱり最強で最高だよぅ!!」
「グルルゥ!グールルゥ!!」
「尊ッ!!!!!」
尚、これを見たクロマは顔を覆って転がっていったが、誰も気にしないことにしたのである。
「あ、そうだキブラくん」
「え」
「ごめんね、キミの居場所…壊しちゃった。けどこれで、キミの嘘つきとお相子ってことで!」
そんな優しすぎるお相子ってないとこちらも顔を覆い、めり込む勢いで蹲った。
この後クロマとキブラは謎の意気投合を見せるのだが…蛇足である。
まぁ、そんなこんなでリィンは闇ギルドからの襲撃を乗り切り、ちゃっかり見習い証のランクもブロンズからシルバーに昇格したのだった。
…
そうして一件落着したリィン達の裏側では…
「あれも失敗、これも失敗…なぜ、何故こうも上手くいかないのだ!吾輩の計画は完璧なはずなのに…!」
一人の老紳士が目を血走らせていたが。




