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第19話 初めての休日

「式典で……?」

「ええ。大勢の目がある中で偽物だと突きつければ、ニコカスだって言い訳できないはずよ。お姉様と同じようにね」

「……どうやって偽物だと示すんだ?」


 椅子に座ったセレスタンが、少し疑うような視線をリディアーヌに向けてくる。リディアーヌの作戦立案能力を疑っているのだろう。


「全く同じ方法よ。聖竜様に暴れていただいて、今度はお姉様が聖竜様を鎮めればいいじゃない。お姉様に頼めば、事前に聖竜様に計画を伝えられるわけだし」


 リディアーヌの匂いに反応するほど聖竜がジャネットに懐いているのなら、暴れる演技くらいしてくれるはずだ。

 暴れ出した聖竜をニコレットが鎮めることができず、突然現れたジャネットが聖竜を鎮める。その様子を見れば、本物の聖女はジャネットだと主張することができるはずだ。


「だがそれだと、状況は五分五分だろう? 前回聖竜を鎮めたのはニコレット嬢なんだから」

「……うっ。だっ、だったらニコカスに私が決闘を―――」

「決闘で勝負をつけるなんて、男ですらなかなかやらないぞ」


 呆れたようにセレスタンが溜息を吐く。しかし、いいかもしれません、とパスカルは目を輝かせた。


「式典では、ニコレット様は再びなんらかの手段で聖竜様を己に従わせようとするでしょう。その証拠を掴めば、ジャネット様こそが真の聖女だと証明できるかと」

「……そうなの?」

「はい。聖竜様はニコレット様を毛嫌いしていますから。『聖女』として式典に参列することになれば、ニコレット様はなんらかの手段を講じざるを得ません」





「今日はいろいろありましたわね!」


 パスカルとラピーヌ亭で別れ、家まで送ると主張したセレスタンと共におんぼろアパートへ戻った。


 作戦決行日は次の式典。それまでに何度か打ち合わせを重ね、ニコカスの不正の証拠を掴む準備と、当日の流れを決めることになっている。


 考えることは山積みだが、幸いなことに頭のいいパスカルが味方になってくれた。


 まあ、なんとかなるわよね!


「疲れてるでしょうし、お茶でも飲んでいかれます?」


 今後もなんやかんや関係を続けていくことになるだろうし……と善意から誘ってみたのだが、セレスタンはあからさまに顔を顰めた。


「……正気か?」

「こっちから歩み寄ってあげましたのに!? 古いアパートですけど、中は意外と綺麗なんですわよ!? ま、まあ朝食の片づけはしてませんけど……!」


 朝は時間がないから食器を放置しているだけで、夕飯前には片付けるつもりだった。

 衣類も少々散らばっている気がしなくもないが、部屋の隅に寄せればどうってことはない。


「そういう問題じゃない。俺は男だぞ」

「知っていますけれど……あっ、そういうことですのね!? ぜんっぜん気にしてませんでしたわ!」


 確かに一般的に考えれば、一人暮らしの家へ男を招き入れるのは危険だろう。


「……さすがに警戒心が足りなすぎるんじゃないか?」

「だって強いですもの、わたくし」


 セレスタンは溜息を吐くと、それとこれとは話が別だ、と子供を叱るような顔でリディアーヌに告げた。


「じゃあ、帰るからな。明日の朝、迎えにくる」

「分かりましたわ。寝坊してたらドアを叩いてくださいまし」

「……寝坊するな」


 明日は、入学して初めての休日だ。思う存分王都で遊びたいところだが、そういうわけにもいかない。


 実家に戻って、お姉様にも作戦を共有する必要があるもの。


 実家に帰る時くらい護衛は不要だと伝えたのだが、『リディアーヌ嬢が過不足なく作戦を説明できるとは思えない』と言われてしまったのだ。なんとも失礼な男である。


「ではまた明日、セレスタン様!」





 実家はそれほど遠くないものの、学園に通うのに比べれば長距離の飛行が必要となる。そのためリディアーヌは、運動用の動きやすい服を着ることにした。

 聖女らしくはないが、長い髪も一つにまとめる。王都と比べ、地方では魔物との遭遇確立も高い。飛行中に魔物と遭遇した際、髪は邪魔になりがちなのだ。


 姿見の前に立ち、身なりを確認する。セレスタン相手に今さら気を遣うこともないが、まあ、一応……というわずかばかりの乙女心である。


「寝坊どころか早起きして朝食まで食べるなんて、わたくし聖女の鑑ですわね」


 買い置きしておいたバターロールパンをかじりながら、うんうんと頷く。生地にたっぷりとバターが練り込まれているが、その上から熱々のバターをかけるのがリディアーヌ流の食べ方だ。


 ちょうどバターロールを五つ食べ終わったところで、玄関がノックされた。セレスタンがやってきたのだろう。


 唇を拭き、玄関の扉を開ける。


「いらっしゃいませ、セレスタン様。———って、あれ? 一人じゃありませんの?」


 彼の後ろには、黒いマントを羽織った人物が立っていた。フードを目深にかぶっているせいで、顔どころか髪すら見えない。


 パスカル? いやでも、それにしては背が高いわよね?


 リディアーヌが首を傾げると、マントを羽織った人物はわずかにフードをずらした。すると、水色の髪が露になる。


「……あっ!」

「久しぶりだね、リディアーヌ」


 ランベール・アズナヴール。セレスタンの兄にして、この国の王太子殿下であ

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