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第14話 大親友

「で、今後はセレスタン様が私の護衛として常に傍にいてくれる、ってことね」

「ああ。目を離すと、リディアーヌ嬢は軽率に魔法を使いかねない」


 どうやら『護衛』というのは名目上の言い方であり、実際は『リディアーヌが魔法を使った際の隠れ蓑』になってくれるらしい。

 つまりセレスタンが傍にいる際、リディアーヌはある程度好き勝手に魔法を使えるというわけだ。


「でも、高度過ぎる魔法はだめよね……セレスタン様の魔法属性は、他の方に知られているの?」

「……いや。知られていないはずだ。だから、リディアーヌ嬢と同じく風属性ということにしておける」

「私、風属性じゃないわよ」


 リディアーヌが答えると、セレスタンは不思議そうな顔をした。

 先程、リディアーヌが彼の前で使った魔法は風属性のものだ。だから、セレスタンが勘違いしても無理はない。


 でも私、天才だもの!


「私は全属性の魔法が使えるのよ!」


 胸に手を当て、ふふん、と得意げな表情をする。

 さすがだ! リディアーヌ嬢は大天才だな! と褒められると思っていたのに、返ってきたのは溜息だった。


「……お前、厄介すぎないか?」

「はあっ!?」


 もう一度溜息を吐き、セレスタンはリディアーヌを見つめた。


「……とにかく、兄上に迷惑だけはかけるなよ」


 なによこのブラコン! と喧嘩をふっかけてやりたいが、相手は王子様。リディアーヌは必死に我慢したのだった。





「リディアーヌ嬢」


 放課後になった瞬間、教室にセレスタンが入ってきた。いきなりやってきたセレスタンと、彼がリディアーヌの名前を呼んだことに周囲がざわつく。

 しかしセレスタンはいつも通りの不愛想な顔のまま、まっすぐにリディアーヌのもとへやってきた。


「帰るぞ」


 下校くらい一人でできると主張したのだが、リディアーヌの主張は通らなかったのだ。


「……ええ」


 仕方なく鞄を持って教室を出ようとすると、話したこともないクラスメートが声をかけてきた。


「リディアーヌ様は、セレスタン様とどういう関係なのっ!?」


 母親の出自の問題はあるものの、セレスタンも王家の人間だ。ランベールほどではないものの、女子生徒達に注目されているらしい。


 これ、どう答えるのが正解かしら?

 護衛、なんて正直に答えるのもおかしいわよね。


 考えるのを放棄したリディアーヌは、セレスタンを見つめた。答えろ、というリディアーヌの要求を彼は理解してくれたらしい。


「大親友だ」


 不愛想のまま答えると、セレスタンはリディアーヌの腕を引いた。これ以上教室にいたくない、という気持ちが伝わってくる。


「そ、そうですのっ! わたくし達大親友ですのよ!」


 セレスタンの答えが正しかったのかどうかはさておき、リディアーヌとしては乗っかるしかない。

 うふふ、と聖女らしく笑いながら、リディアーヌは慌てて教室を出たのだった。





「……わたくし達、大親友でしたのね?」

「それなら、一緒にいる理由になるだろう」


 完全に二人きり、と判断できない状況では、リディアーヌは一応聖女らしい振る舞いを続けることになった。

 この調子でいけば、あと少しすれば聖女らしさが板につくだろう。


「で、今日はこのまま帰るのか? それなら、家まで送るぞ」

「いえ。今日はわたくし、『ラピーヌ亭』に行こうと思ってますの」


 いろいろあって忘れそうになっていたが、ロッカーに書かれていたメッセージを無視することはできない。


 喧嘩を売られているのなら、買うしかないもの!


「……逢引でもするのか?」

「呼び出されたから行くだけですわ」

「告白じゃないのか?」

「えっ!?」

「ラピーヌ亭はそういう目的に使われることが多い店だぞ」


 呼び出しのメッセージが泥まみれのロッカーに書いてあったから、告白の可能性なんて考えてなかったわ。

 でも私はかなり可愛いし、可能性はあるわね。


「……そうかもしれませんわ」


 リディアーヌが真剣な面持ちで頷くと、なぜかセレスタンは首を横に振った。


「違う気がしてきた」

「失礼過ぎませんことっ!?」

「とりあえず、俺も同行する」


 失礼男を置いていきたい気持ちもあるが、仕方ない。リディアーヌは胸ポケットからサラドを取り出し、大きくなるよう促した。

 立派な火竜になったサラドを見て、セレスタンが目を大きく開く。


「……どうやって、気性の荒い火竜を手懐けたんだ?」

「わたくしの強さを思い知らせましたの。それだけですわ」


 いつも通りサラドにまたがるが、セレスタンはなかなかサラドの背に乗ってこない。


 もしかして……。


「まさか、怖いんですの?」

「……そんなわけないだろう」


 ムッとした表情でサラドにまたがったセレスタンの足はあからさまに震えていた。どうやら、リディアーヌの見立て通り怯えているらしい。


「ふふ、どーしてもって言うなら、わたくしにしがみついてもいいですわよ?」

「遠慮する」

「へえ、そうですの。サラド、飛んでいいわよ」


 サラドの首を軽く叩く。サラドが元気よく飛び始めた瞬間、セレスタンはリディアーヌの腰に腕を回してきたのだった。

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