第8話 縦読みの告白
━━過去のスマホでのやり取り━━
あき:好きな色ってなんかあるー?
りか:有るよー好きな色! 水色と紫色ー
あき:きらいな色はなんかあるー?
あき:できればあると助かるんだけど
りか:きらいな色はないかなー
りか:なんとなく蛍光系はいややけど
りか:人それぞれだしねー
あき:すくない気がする好きな人
あき:付きあい持ちたくないかも笑
あき:きらいとまでは言わないけどね笑
あき:合わないなー趣味が
りか:他の色をわたしなら選ぶなー
りか:ニッチな気がするし
あき:っね! 俺も他の色選ぶなー
あき:てか紫色好きなのか!
あき:クレバーな色やわ
あき:だいぶ侑のこと分かったわー
りか:いい意味だよねーそれー?
あき:さあねー? どうでしょう笑
りか:るんるんしそうだったわ!
あき:いろの所からここまで左だけ読んで
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曖昧だった記憶である縦読みの告白をどのようにしたかの方法が蘇った彼、岩地秋はどうしてこんなことをしたのかと勝手に恥ずかしい気持ちになっていた。
(冷静にやばいな……過去の俺)
直接会って告白すればいい物をこんなに回りくどいことをしたら片重いの相手である、侑里香は当たり前に返答に困るだろうし気付かれない可能性すらあるし、告白するタイミングがとにかくおかしい、確かやり取りの中で待ち合わせをしようとしていたけど、場所があまりにもそれっぽい場所過ぎてビックリされてしまい、その勢いでのやり取りの中での告白と考えると本当にみっともないし、ただの意気地なしとなってしまっていて、しかも侑に対して配慮の欠片も無い訳で、いくら若いからとか高校生だからと言っても言い訳して良いことじゃない、記憶にある彼にもう少し気を使えるようになれと伝えて、指導してやりたい位で本当に意味も理由も何も分からない秋は、ただのバカが考えた物事なんだと本心で思っていながらも同時にそれは自分なんだと認める他、無かった。
それはそうだ。
その記憶、全てを改変していく訳なのだから。
そして普通に考えてこんなチャンス頂けるものでも無いのだから。
「はあぁ……」
情けなくなった秋は、周りなど気にせずに大きな溜息をついた。
授業中でちょうど小テスト中のため、誰も声を発していなく秋の溜息は教室中に響き渡った。
教室内43名の視線が一斉に秋の方に向く。
「随分でかい溜息するな。岩地」
この人は数学教師で中学生の時も授業を受けたことがあった。
中学野球部の監督をしていて肌が黒過ぎることで学生からいじりの表現として、ある異名を付けられていた。
「黒豆先生。すいませえん」
「うるせえなぁ」
このいじりのおかげで秋の溜息は40名からは忘れ去られて、その代わりに黒豆の話題で持ち切りになった。
教室中が騒がしい中、秋の後ろから相棒である上野豊生の小さな声が聞こえた。
「岩地、なんかあったの?」
「いや、特になにも無いよ」
「なら良いけどな」
「なんかありがとう豊生」
「おう!」
はぐらかしたが豊生は何かを察している様子にも見えてさすが相棒と秋は感じていた。
その後、授業が終えて休憩時間に入った時。
旧友である、橘大地が心配そうな足取りで秋の席に寄ってきた。
「岩地、さっきのどうした〜?」
「たっちゃんもか! なんも無いよお」
「ほんとかよ。心配だわ」
「まじまじ!」
「なんか、空元気っぽいけどな〜」
「そんなにかよお」
「おまえそういう所あるやろ」
「そんなこと言われてもなあ。わからんもん自分のことなんて」
「まあ、そんだけだわ。ちょっと心配でな」
「心配、ありがとうな」
「悩みあったら聞くからよ」
「おう! ありがとう」
(そんなにため息でかかったのか)
ただ、溜息のことを考える隙間は秋には到底無かった。
それもそのはずだ。
1周目の時、彼がした告白の内容は完全に思い出したが重要なことが思い出せていないで、いつ告白したのかがどうしても分からない。
それに行動を改変しているために1周目の時にあった出来事の記憶が、使い物にならない可能性すらある。
どう、コントロールするのか。
それに秋はまだ学校内での侑との会話が1回も無かった。
タイミングを見計らい過ぎていた。
その時。
「岩地?」
(え? え? え?)
ゆっくり振り向くとそこには侑の姿があった。
「侑……さん? ど、したの?」
「どしたのって、心配でね。めちゃくちゃ大きい溜息ついてたからさ」
(ま、じか)
秋にとって溜息なんてどうでも良かった。
1周目の時、彼はこのタイミングでは侑とは話した記憶が無いから嬉しさの反面、驚きが凄かった。
これもまた改変になったのだ。いやなってしまった。
完全に棚ぼたでこんなこともあるのかと学びつつも少しの怖さもあった。
なんせ事例も無ければこの世界では、完全に否定される存在として時間跳躍者である秋は居たからだ。
「まあ、心配しなくても大丈夫!」
「あんなに大きかったのに?」
「平気! てか侑さん優しいんだねえ。意外」
「いやいや! 普通にだよ! てか呼び捨てでいいのに」
「なんか変な癖なんだよね」
「そうなのかあ」
「そうそう」
(なんだよ、楽しいかよ)
すると、チャイムの音が鳴り始めた。
「キーンコーン……」
「授業始まるね! 戻るね!」
その音で侑は席に戻ろうと自分の席に体を向けて言い残して行った。
「う、うん!」
こんな楽しいのに不安でならない生活を送っていくことになるとは、思ってもいなかった秋は面を食らっていたがまだ改変を始めて間も無い状態に気付いた。
とりあえずまた1歩前へ進んだのだからこれは、物語の序章に過ぎないと胸に誓った。




