第三話 理不尽
広大で枯れた地面はひび割れが途方もなく広がる異質な空の下
四つの音がリズミカルにこちらに近づいてくる。
「今度は馬かよ。」
影のように真っ黒な体の周りが歪みながら近づいてきている。
突然黒馬が溶けるように地面に消えた。
「どこ行った⁉︎」
マズイ。あのルバルっていうやつが言ったことが事実なら防御なんて無理だ。一発でもアウト
最高難易度のシューティングを体力一でやる極モードみたいだよコレ…
黒い液体のようなものがひび割れになぞるように染み込んでいるのを見た瞬間、真後ろからシュッと姿を現した。
「やろぅ!」
だが刹那、ひび割れの隙間から黒い鞭のようなものが両腕を縛りつけた。
身動きが取れない!コイツ、影なのか!
やばいやられる!今度死んだらどうなるかわからない!
力勝負では完全にあちらが上なのか、ただの拘束目的の黒い鞭がトシの腕を粉々にしていた。
「あがぁ!ッゥゥゥ!」
あまりの痛みに膝が地に着くと、馬は確信したように頭に棘を生やした。確実に死ぬくらいの鋭さを持たせて。
力を、マズイマズイ!出せ!出せオレぇ!
何を思ったのか口をガッと開き噛みつくイメージを持った。
イメージ…イメージ。伸びろ!
ガシュン!
歯が鋭く伸びて馬の体を貫いた。
だが軽い。馬は影だった。
刺した箇所は波打つように波紋が広がり、凪すら感じた。
心臓を狙ったのになんで!強いやつは必ず弱点があるはず!どこだ、考えろ考えろ!
頭だ!
馬が頭を上に向け、一本ツノを振り下ろす
目には目を、頭には頭を!
一か八か、頭蓋骨をトゲトゲにし、それを更に勢いよく伸ばす。
髪とツノが当たるわずか数センチ、馬の脳天を貫いた。馬は黒い液体となってドロドロと溶け出した。
同時に腕を破壊した鞭も崩れ落ちる。
「ま、また勝てたのか…おかしすぎるだろ…なんで俺だけ、攻略難易度lv.100みたいな場所にいるんだ?」
ていうか、歯と頭、戻せるのかこれ?
_______ディッセンバ宮殿_______
今日は王様直々の国家宴会が開かれていた。
王様、王妃は玉座に座り、客を見渡していた。
対魔王組織として結成した転生者のグループも食事を楽しんでいた。
その時、会場の真ん中で、派手な魔法陣と魔力の渦が形成された。
「うわぁ!」
「転生者か!?」
「こんなに派手なのか!」
「静まれい!」
口にしたのは王様、ラック王だ。
「直ちにその渦から離れるのだ!皆のもの!」
魔力の粒子と荒々しい風が魔法陣を囲いながら一人の男をこの地に落とした。
「……ッ、い、痛い…クソ、あのオヤジ何しやがった?トシ!トシは…って」
ハヤト、彼も転生していた。
「よくぞこの世界に来たな転生者よ。儂の名はラック。ラック・ディッセンバだ。してお主。何故ここに来た?」
「?いや、俺は変なおっさんが俺の友達を急に刺して、それで止めようとしたら…」
待てよ、あの後俺は何をされた?一体何があった?
それに、俺の右手、なんでない?
「不幸な者だ。
皆のもの、すまないが宴会は中止だ。リョウよ、彼を案内してくれ。」
承知しました。王様
「な、なぁあんた。リョウって名前なんだな。俺ハヤト。日本人だろ?」
「そうだ。だが君も別の日本なんだろ?」
「は?何言ってんだ。日本は一つしかないだろ?」
「今はいい。とりあえず部屋を用意してある。後、これは君の自由なのだが…」
その場で立ち止まり、ハヤトの方を向く
「魔王を倒すことに協力してくれるか?」
「魔王?いるのかこの世界に。」
「あぁ。厳密に言うと、魔王の死骸の完全なる消滅だ。」
古代の話だ。平凡なこの世界に魔王が誕生した。それに追いつくように、勇者なる者が生まれた。勇者は魔王を倒すため、神の聖剣を駆使して魔王を倒そうとしていた。
だが勇者は負けた。
魔王歯神の聖剣を取り込み、それを知った神は怒り、鉄槌を下そうとした。
だが魔王は我々の想像を遥かに超えた強さを持っていた。
死ぬ間際、やつは神の血を取り込み、そのまま絶命した。そこからこの世界は変化していった。魔王は神の血を取り込んだことにより神になった。神もどきの死骸がこの世界にある影響で魔物は格が一段階上がり、危険なエリアも複数生まれた。
「なんで神は魔王の死骸を放置しているんだよ!」
神は神に触れることを許されていない。
だから神はこの世界に転生者を送り込んだ。
数多の世界の者を無作為に、犯罪者も子供も。
「君もそのうちの一人だ。」
ッ…勝手に重たいもの背負わされて…勝手に世界救えだと?
「気持ちは分かる。俺も乗り気じゃなかった。」
「じゃぁ、なんでそんなこと…」
ニヤリと笑い。
「俺、勇者なりたかったんだよ。ヒーローってかっこいいよな…昔見てたアニメであったんだよ。転生して、魔王倒してっていうの…」
体格はいいけど、本当は同い年なのか?
「夢物語が現実なんだなーって。それで俺は、強さを認められて隊長になったんだ。君の世界でも、そう言うのあったろ?」
優しい人なんだな。それに王様もなんだか優しかったような。みんな怯えてるのか。ソレに。
「俺…その運命を全うしたい。俺も勇者になりたい!」




