内緒の話
「ねぇホイップ、どのお店から行くの?」
「おやつのあるお店からでしょ?」
「おやつは最後。とりあえず、アリエルさんからのお使いから先に買いに行こう」
「えー、つまんないの」
おしゃべりをしながらスタスタとルノート村を進む三人。お昼前を知らせる村の鐘が響き、歩いている人々の足取りが少し早くなる。横を通りすぎていく村の人々や、町並みを見ながら歩いているシオンが、足を止め、キョロキョロと町並みを見渡していると、突然ぎゅっと右手をつかまれた
「シオンさんも行きましょう」
「あっ……うん」
ライとムギと一緒に先に進んで離れていたはずのホイップがシオンの手をつかんでいた。そのまま手を繋いで、待っていたライとムギの元に向かう。お店の前で待っていた二人と合流すると、ホイップと手を繋いだまま村を歩く。ライとムギも手を繋いで、楽しそうに会話をしながら村を歩いていると、ライとムギが一件のお店を指差しやがら、少し振り向いて背後にいるシオンを見た
「あのお店は、私とムギの好きなパン屋。あまいパンが多くて好きなの」
「ホイップも好きだよね」
「そうだね。私も好きだけど、今日はパンは買わないよ」
「えー、せっかくなら買おうよ。お昼ご飯にしよう」
「今日はダメだよ。買わない」
三人の会話を聞いてシオンがフフッと笑う。その笑った顔を見た三人もエヘヘと笑う。その後は、シオンに道案内をしつつ、おしゃべりも進み、すぐに目的の八百屋に着いた
「おばちゃん、こんにちは」
ホイップがお店で掃除をしていた白髪交じりの少しふくよかな女性に声をかける。声をかけられた女性が振り向き、ホイップ達を見て微笑みすぐ、シオンに気づいた
「こんにちは。あらあら、また迷子かい?」
「そうだよ、シオンって言うの」
ライとムギがシオンの背中を押し女性の前に立たせる
「こんにちは」
「こんにちは。私はナタリアよ。よろしくね」
ナタリアが挨拶をしながらシオンに手を差し出す、シオンが恐る恐る手を握り返しナタリアがシオンに向けて微笑む。二人が挨拶をしているその間、買い物のため、お店の物を選んでいたホイップが手に持っていた果物を落としてしまった
「おやおや。大丈夫かい?」
「ごめんなさい。大丈夫です」
ホイップが慌てて落とした果物を拾い、駆け寄ったナタリアと話しはじめる。その間暇なライとムギがお店の外で遊んでいる。一人暇になったシオンはお店の中を見てまわる。見慣れない色とりどりな果物や野菜に目を取られていると、買い物を終えたホイップが店の外でライとムギと話をしているのが見えた。シオンも外に出ようとした時、ナタリアがシオンに手招きをして呼んだ
「これ、どうぞ」
ナタリアがレジのそばの戸棚に隠していた袋に入ったクッキーをシオンに差し出した
「いいの?」
「ああ。ライとムギに狙われないようにね」
「シオンさん、次のお店行きますよ!」
まだ店から出てこないシオンを心配したホイップが大声で呼び、ライとムギもシオンに向けて手招きをすると、慌ててナタリアから貰ったクッキーをズボンのポケットにしまった
「またおいでね」
「はい。ありがとうございます」
手を振るナタリアにお礼をいい三人が待つ入り口の方へと向かっていく。お店の入り口で合流し、おしゃべりをする四人の姿を見たナタリアがふぅ。と一息ついて、またお店の掃除をはじめた
「ねえ、ナタリアさんと何を話していたの?」
ナタリアのお店から出て少し経った後、シオンの右手をつないで歩くムギが問いかける。ナタリアの言葉を思い出し、答えに困ったシオンはすぐに返事をせず、首をかしげる
「えっと、秘密……」
「えー、教えて」
と、今度はシオンの左手をつかんで歩くライがお願いする。左右から話しかけられ困っていると、先に歩いていて、三人が来ないことに気づいたホイップが三人に向けて大きく手を振る
「ライ、ムギ。置いていくよ」
「ちょっとまって!」
ホイップに呼ばれてつかんでいたシオンの手を離し、走ってホイップの所に駆け寄っていく。立ち止まり、一人残ったシオンがポケットに入れていたクッキーを取り出し、クッキーを空を向けた
「このお菓子、誰かが好きだった気がする……。魔術を使っていた気がするけれど……。今はまだ思い出せないや」




