魅惑の赤い果実
ルノート村が見える山の上で、長い黒髪の女の子が、木の枝に座り、手のひらより小さな赤い果実を齧っていた。隣の枝に飛んできた鳥が赤い果実をじっと見つめている。持っていた果実を木の下に向けて落とし、鳥が追いかけるように乗っていた木の枝から降りる。地面に着くと、大きく口を開け、女の子が落とした果実を咥えて飛び立っていた
「そう。シオンが……」
鳥が去っていく姿を見ながら女の子が呟く
「いいざまね。いますぐにでもまた会いたいわ」
また一人呟きながら、ポケットから個包装にされた手のひらほどのクッキーをポケットから取り出し、雲一つない空にクッキーを向けてた
「でも、今はダメね。弱いものいじめはダメだって教えてくれたものね」
クッキーの袋を開け、一口で頬張り食べる。小さなクッキーはすぐに食べ終え、木の枝から飛び降り、ゆっくりと地面に着地し、ふぅ。と息を吐き目を閉じた
「魔力のないシオンなんて愛せないわ」
そういうと、鳥が飛び去った先と同じ方向へと歩きだした
「よし、買い物終わり。帰ろっか」
一方その頃、ルノート村では、大量の買い物袋を持つライやムギにホイップが声をかけていた。両手いっぱいに持たされた買い物袋に二人が嫌そうな顔をしている
「ホイップ、沢山買いすぎだよ……。これお家まで持って帰れるの?」
「大丈夫だよ。ほら、頑張って」
ホイップも両手に食材がいっぱい入った紙袋を持つ。一歩遅れてシオンも目の前に置かれた沢山の買い物袋を両手いっぱいに持ち、三人の後を歩く
「シオンさん、力持ち!」
「本当だ。それならもっと買い物をしても良かったですね」
三人より多く持つシオンを見てライとムギが驚く中、ホイップだけは少し残念そうにシオンを見ている。それに気づいたライとムギが苦笑いしているなか、三人の元に着いたシオンが三人の様子に首をかしげている
「ホイップ、早く帰ろう。アリエルさんが待ってるよ」
「そうだよ。夕御飯も遅くなっちゃう」
「ライはご飯のことばっかり」
「ムギだってお腹空いたってさっき言ってたでしょ?」
「えー、そうだったっけ?」
ホイップが村に戻らないようにライとムギが早足で帰路に向かう。二人の後ろ姿を見ながらホイップとシオンも帰路を目指す。買いすぎた重たい荷物にホイップの歩く速度が少しずつ遅れはじめ、隣にいるシオンも、ゆっくりゆっくりと歩いていく
「シオンさん、村はどうでしたか?」
「とてもいい村。なんだかとても懐かしい感じ」
「気に入ってくれましたか?」
「そうだね」
ゆっくりと歩きながら話していると、来ない二人を心配したライとムギが戻ってきた
「ホイップ、シオンさん。置いていくよ!」
二人の少し先でライとムギが手を振り二人を呼ぶ。ホイップが慌てて二人の元に走り出す。シオンは走ることなく、ニコニコと楽しそうに話す三人を見ていると、近くにある木から突然赤い果実が落ち足元に転がってきた。シオンがその果実を拾い、少し齧られた跡があるのを見つけ、ナタリアから貰ったクッキーもポケットから取り出し果実とクッキーを見つめた
「この果物も懐かしい。誰かが好きな食べ物。でもまだこれ以上思い出せないや」




