心休まる場所
「ライ、ムギ。ちゃんと片付けてるの?」
開けっ放しされている書庫の前でホイップが声をかける。二人からの返事は来ず、散らかったままの書庫を見たホイップが、はぁ。とため息をつき、書庫の中に入る
「もー、二人とも飽きちゃったの?」
また声をかけながら、床にある魔術書を踏まないように書庫の中を進む。部屋の中を見渡しても二人の姿はなく、またため息をつきながら開いた窓から外を見る
「どこに遊びに行ったの?」
少し窓から体を出し暗い外を見て、ライとムギの姿を探す。キョロキョロと周辺を見渡していると背後からガタンと物音が聞こえた。窓から出していた体を書庫に戻し振り返る。すると、ライとムギが本棚に戻していた魔術書や、ホイップの足元にあった魔術書が一人で浮かんでいた
「記憶がないんでしょ?わざわざここに来ずに、勝手に どこかで生きていれば良かったのに」
一方その頃、キッチンに来たシオンにカナメが困ったように話しかけ、その後のため息がキッチンに響く。カナメの向かいに座るアリエルは、二人の顔を交互に見て、ゆっくりと冷めてしまった紅茶を飲む
「……記憶は少しずつ戻ってきている」
と、シオンが呟くように言うと、アリエルとカナメの手が止まり、二人が顔を見合わせる
「戻ってきているの?例えばどんな記憶?」
「……あの魔術は私が得たの。誰も知らないはず」
「あの魔術って?アリエル知ってる?」
「さぁ……。私は……」
アリエルがカナメの質問に少し首をかしげ答えると、
突然家がぐらりと揺れた。二人が一瞬顔を見合わせた後、キッチン入り口にいるシオンを見ると、シオンの周りを囲むように、数冊の魔術書が浮かんでいた。アリエルとカナメが驚き戸惑っている間にも、シオンの周りには次々と魔術書が現れシオンを囲う
「ホイップ!ライ、ムギ」
「……三人を呼んでも無駄」
椅子から立ち上がり三人を呼ぶアリエルに、シオンがクスッと笑う。カナメもゆっくりと椅子から立ち上がると、シオンが側に浮かぶ魔術書を見渡し、一冊の魔術書を選んで取る。その魔術書の表紙を見て、またクスッと笑うと二人に表紙を向ける。その表紙には、三人の少女が描かれており、シオンが愛おしそうに表紙を撫でる
「使い魔ならちゃんと魔術書の中で休ませてあげないとね。魔術書の中なら、美味しいご飯もいらないものね」




