怒られるその前に
一方その頃、一階にあるキッチンでは、ホイップが忙しそうに食事の準備をしていた。そろそろアリエルを呼ぼうかと思いながら、テーブルに置かれた食器などを並べ直していると、お腹をすかせたカナメがキッチンに入ってきた
「うわっ。美味しそう」
テーブルにある料理を見たカナメがサラダを少しつまんで食べる。ホイップがカナメを見ながら、温め直したスープをいれたお皿をテーブルに置いていると、アリエルもキッチンに来て、テーブルを見て少し驚いた顔をした
「あらホイップ、こんな短時間でこんなに作れたの?」
「いえ、私がキッチンに来た時には用意されていました。アリエルさんが作ったんじゃないんですか?」
「いいえ。私じゃないわ」
「じゃあシオンが作ったかもしれないの?」
サラダにあったミニトマトをつまんで食べながら不機嫌そうにカナメが言うと、アリエルがフフッと笑い、ホイップは戸惑った表情で二人の様子を交互に見ている
「どうする?ホイップに新しいの作ってもらう?」
「いや。食べなかったら怒られちゃうからね。仕方ないわ」
「ホイップ、用意をお願いね」
「はい。すぐに」
ホイップがアリエルに返事をするとまたパタパタと急がしそうに食事の準備をはじめる。カナメが椅子に座り、アリエルがその向かいに座ると、ホイップが先ほどテーブルに置いたスープをカナメの前に置き直す。アリエルの分のスープも置いた
「でも、よくこの家が分かったわね」
「あの魔術書が騒いでね。シオンの魔力も感じるし、嫌な予感がして魔術書の後を追いかけてきたの」
スープを飲みながら会話をする二人。側で準備をするホイップは二人の会話を聞かないように、いつもよりもテキパキと動く
「記憶はいまいちだけれど、魔力だけは戻っているのね」
「そうみたいね。もし、魔力が戻っていたらどうするの?」
アリエルがカナメに聞いた質問に、洗い物をしていたホイップの手が止まる。少し振り向いて、向かい合っている二人を見ると、カナメが椅子を座り直し、アリエルに向かって嬉しそうにクスクスと笑っていた
「もちろん、また全ての魔力をどんな手を使っても奪い取るわ。シオンは魔力を持ってはいけない人なのよ」




