46. 鐘の音を合図に
「えーっと、残りは……」
両手いっぱいに買い物袋を持ったシオンがルノート村を歩く。ホイップから渡されたメモを確認しながら目的のお店へ向かっていると、シオンの横を子供達が走り去っていった
「空が暗くなる前に帰らないと……」
人混みに消えていく子供達を見た後、夕暮れになりそうな空を見上げ、目的のお店までシオンも少し早足で向かう。行き慣れた街中を進んでいくと、店の前で髪の長い女性のお客の相手をしているナタリアを見つけた
「こんにちは」
シオンがお客の背後からナタリアに声をかける。急に背後から声が聞こえ、驚いたお客がビクッと体が動かす
。ナタリアが顔を少し動かして、女性の横から少し覗くようにシオンを見て、にこりと微笑む
「こんにちは。おや今日は一人?ホイップちゃんは、どうしたんだい?」
「なんだか体調が良くないみたいなので、私が代わりに来ました」
「そっか。それは心配だね……」
シオンとナタリアが話していると、二人の間にいた女性客が顔を伏せたまま突然走り出した
「まったく、カナメったら挨拶してもいいのにね」
走り去っていったカナメにナタリアが呆れたようにため息をつく。シオンもカナメが走っていた方に目線を向けると、もうカナメの姿は見えなくなっていた
「あの人はカナメさんって言うんですか?」
「そうだよ。なかなか魔力があっていい子なんだけれどね。どうしたんだか」
ナタリアがシオンに返事をすると、夕暮れを告げる鐘の音がルノート村に響き渡る。シオンの周りにいた人々の歩く速度が上がる
「早く帰らないと。今日は私がご飯を作るので……」
「そうかい。私達もそろそろ店じまいの時間だね」
「じゃあ、急いで買わなきゃ」
ナタリアの店前に並んだ野菜を見て、お喋りをしながら買う野菜を選んでいるその時、走り去ったカナメは家に着き、玄関の扉をバタンと強めに閉め、大きく息を吸い、ふぅ。とゆっくり吐き出していた
「本当変わらない笑顔ね。今日はなんだか、いつもよりムカつくわ」




