美味しい香りに誘われて
シオンが、トントンと手際よく赤玉ねぎを切る。隣にいるライがじっとシオンの動きを見つめ、ムギは赤玉ねぎが目に染みたのか、ぎゅっと目を強く閉じている。数個ほど赤玉ねぎを切った後、ライが大きなボウルを戸棚から取り出した
「シオンさん、切った野菜はここに入れておきますね」
「ありがとう。助かるよ」
「このお野菜は私が切ります」
「ありがとう。細かく切ってくれると嬉しいな」
「わかりました、頑張りますね」
ムギがテーブルの上に置かれていた人参に手をつける。ボウルに入れ終えたライも一緒に人参を切る。シオンの野菜を切る音と二人のお喋りの声がキッチンに響く
。二人の手伝いもあり予定より早く切り終えたシオンが、テーブルでボウルに切り終えた人参等を入れている二人の様子を見る
「二人とも偉いね。お陰で思っていたよりすぐ終わっちゃった」
「いつもホイップのお手伝いしていますから」
「そうです。手伝わないと怒られちゃいますから」
「そうなんだ」
ライとムギの返事に、シオンがクスッと笑いながら、二人が切った野菜が入ったボウルを受けとるコンロの上に置かれた寸胴鍋にシオンが切った赤玉ねぎを炒め、ライとムギが切った野菜も少しずつ鍋の中に入れていく
「シオンさん、このスープって昨日のと一緒?」
時間が経ち、キッチンに良い匂いが漂ってきた頃、寸胴鍋のスープをかき混ぜるシオンにライが声をかける。テーブルでサラダの盛り付けをしていたムギもライの言葉を聞いてシオンの隣に駆け寄り、クンクンと鍋から漂うスープ匂いを嗅ぐ
「本当だ。アリエルさんが持ってきたスープと一緒だ」
「シオンさん、レシピ知っているの?」
「ううん、でも知っていた味だからなんとなく……」
「良い匂い。美味しそう」
「今も美味しいだろうけれど、夜の方が美味しくなるよ」
「そうなんだ。楽しみ」
「おはよう。みんなで何しているの?」
三人がコンロの前で話していると、起きてきたアリエルが三人の姿を見てクスクスと微笑む。ライとムギがキッチンの入り口にいるアリエルを見てすぐ駆け寄り、二人一緒にアリエルをぎゅっと抱きしめた
「ホイップがまだ起きないから、私達が朝ごはんを作っているんです」
「あら、まだ起きないの?」
「そうなの。アリエルさん、ホイップ起こしてあげて」
ライとムギの頭を撫でながら二人の話を聞いたアリエルが困ったように笑いため息をつく。スープを混ぜていた手を止め三人の様子を見ていたシオンに気づいて、また困ったようにフフッと笑う
「そうね。せっかく美味しそうなご飯があるなら一緒に食べたほうがいいものね」




