私の代わりに
「これは、ライとムギの魔術ね」
その頃、二階の書庫にいるアリエルが窓辺に置いた椅子に座り、一冊の本を読んでいた。パラパラとページをめくり読み進めていると、本書かれていた魔方陣に目を止めた
「所々間違えているわね。後でホイップに言わないと」
そう呟きながら次のページをめくる。最後のページを見た後、本棚に戻そうと椅子から立ち上がると、突然本棚から一冊の本が落ちてきた。持っていた本を片付けた後、落ちた本を取り、表紙を見て少し驚く
「あら、無くなっていた本ね。こんなところに落ちていたの」
探していた魔術書を見つけ、少し微笑みながらページをめくる。本棚の前で読み続けていくと、少しずつアリエルの表情が険しくなっていき、最後のページを読み終えるとバタンと強めに魔術書を閉じる
「ホイップ」
「はい。なんでしょうか」
「あら、まだお風呂中だったの?」
「いえ、シオンさんと服を着ているところでした」
アリエルが名前を呼んですぐ隣に現れたホイップが、書庫にいることに気づいて、濡れている髪を左右に振る。濡れていた髪があっという間に乾わき、ホイップがふぅ。と一息つく
「これ、解読お願いね」
ホイップに拾ったばかりの魔術書を差し出すと、アリエルのお願いを聞いたホイップは少し嫌そうに本を受けとる
「えー?解読ですか?」
「そうよ。たまには魔術を使わないとね」
アリエルの返事を聞いて、ホイップが渋々書庫の広い所に向かう。アリエルがさっきまで座っていた場所にある窓から、ホイップまでそよ風吹いて髪や両手に持つ魔術書のページがめくられる
「この魔術書はなくなっていた本ではありませんね」
書庫の少し広い所で目を閉じているホイップが呟く。アリエルはその言葉に返事をせず、ホイップの様子を見つめている。魔術書が、風でページがめくられ続け、最後のページがめくり終わると、目を閉じていたホイップがゆっくりと目を開けた
「この……魔術は……私は知りません……」
か細い声でホイップが言うと、バタンと床に倒れてしまった。持っていた魔術書も床に落ち、パタンと魔術書が閉ざされた
「ホイップ、大丈夫?」
アリエルがホイップの体を揺らし起こそうとするが、ホイップは起きることぐったりとしている
「魔力を一気に使ったの?」
気を失っているだけなのを確認し、ほっと胸を撫で下ろしていると、ホイップの側に落ちた魔術書が独りでに浮かびだした。書庫の中をグルグル回る魔術書をアリエルが見ていると、窓の近くにある本棚の魔術書の隙間に入っていった
「ライ、騒いだら怒られちゃうよ」
「大丈夫だよ。もし、怒られたら一緒に謝ろう」
書庫の隣の寝室からライとムギの楽しそうな会話が聞こえる。アリエルが寝室の扉をノックもせずに寝室の扉を開けた
「アリエルさん、どうしたの?」
突然開いた扉に驚いたライとムギがはしゃぐのを止めて、アリエルを見ると、アリエルがホイップを抱え寝室に入る。驚く二人を横目に、眠るホイップを起こさないように、そーっとベッドに寝かせた
「ホイップ、寝ちゃったの?」
「そう。ちょっと魔力を使いすぎたの。しばらく様子を見てくれる?」
「うん、わかった」
「たくさん眠っててよかったね。いつもなら寝ている時間だから」
「そうだね、交代でホイップの様子を見よう」
寝ているホイップの側でヒソヒソ話す二人。三人の様子をしばらく見たアリエルが寝室を出ようとした時、寝室の扉がまた開いて、今度は湯上がりのシオンが寝室に入ってきた。ホイップ以外の三人の視線が一斉にシオンに向く
「あの……なにか……」
急に見られて戸惑っていると、アリエルがクスッと笑ってシオンの隣に来るとホイップを見る。シオンもベッドに寝ているホイップに気づくと、アリエルがシオンに声をかける
「あなたもホイップの魔力に変化はないか見守ってあげてね。よろしくね」




