ゆっくりと少しずつ
アリエルが帰ってきて数分後、目が覚めたシオンがゆっくりと体を起こす。寝すぎたせいか、少し痛む頭を手で押さえながらゆっくりと周りを見渡す。ベッドの両端にライとムギが眠っているのを見て、起こさないようにそーっとベッドから降りる。まだ頭を抱え少しふらつきながらゆっくりと、寝室から出て階段を降りる。降りている途中、リビングからホイップとアリエルの話し声が聞こえてきた
「シオンさん、おはようございます」
「おはよう。体調はどう?」
リビングに入ってすぐ、アリエルと向かい合って椅子に座っていたホイップに声をかけられ、すぐにアリエルからも声をかけられたシオンは戸惑いつつも、うんと頷く
「えっと、大丈夫だと思います」
「何か食べますか?シオンさん、ずっと眠っていて、今日はまだ何も食べていませんから」
「じゃあ、ちょっと食べようかな」
「良かった。アリエルさんがスープを頂いたんです。一緒に食べましょう」
そう言うと椅子から立ち上がり、その席にシオンを案内する。ホイップが座っていた椅子に今度はシオンが座り、アリエルと向かい合わせになると、ホイップはスープを取りにキッチンに向かっていった
「ライとムギはまだ寝ている?」
「はい。まだ起きる様子はなかったですが……」
「魔力の使いすぎね。もう少し眠ったら起きてまた騒がしくなるわ」
シオンの返事にアリエルがクスッと笑う。二人の会話が止まり、アリエルがまだ少し頭が回らず、ボーッとしているシオンを見ていると、ホイップがトレーに三人分のスープの入ったお皿を乗せてキッチンからリビングに戻ってきた
「どうぞ。熱いので気をつけてくださいね」
「……ありがとう」
シオンの前にスープとスプーンを置き、アリエルの前にも同じスープを置く。シオンがゆっくりとスプーンでスープを掬い、少し冷ますため、ふぅ。と息をかけゆっくりと飲んだ
「これ……」
シオンがスープを見つめ、ポツリと呟く。アリエルの左隣に座ったホイップが不安そうにシオンを見る
「お口に合わなかったですか?」
ホイップがシオンに心配そうに聞く中、アリエルがフフッと微笑みながらスープを一口飲む。リビングに静かな時間が流れ、再び降りはじめた雨音が室内に聞こえてくる。スープを見つめ、返事をしないシオンを心配して、ホイップがアリエルとシオンを交互に顔をうかがっていると、シオンがスープをスプーンで掬い、また冷ますように少し息をかけて、ゆっくりと一口飲んだ
「このスープ、とても懐かしくて、とても好きだった味。たしか大切な人が作ってくれていたそんな気がする」




