名前を呼ばれて
「これはそう、合ってる」
「ホイップ、これは?」
「これはね……」
寝室でベッドに座り、再び勉強をはじめたライとムギ。二人に勉強を教えるホイップ。部屋の窓からそよ風が吹き、ムギの本がバラバラとページがめくられる。パタンと本が風で閉ざされたついでに勉強を止め、ベッドの側にあるテーブルに置いていた少し冷えた甘い紅茶が入ったティーポットをコップに注ぐため、ベッドから降りる
「シオンさん、飲み物を飲む前に、また寝ちゃったね」
と、シオンが眠るベッドを見ながらムギが呟く。その声に一緒に本を読んでいたホイップとライもシオンのいるベッドに目線を向ける
「うん、アリエルさんは不安定になるかもって言ってたから……。仕方ないのかも」
「ねえ、ホイップはシオンさんから魔力も魔術も感じないの?」
「うん、そうだね」
「アリエルさんは分かるのに、ホイップは分かんないの?」
「使い魔だからってアリエルさんの使う魔力は全部分かんないもん。仕方ないでしょ」
ホイップがライに言い返していると、二人の分も紅茶を淹れたムギが二人にコップを渡す。テーブルに置いていたムギの分のコップを取り、ベッドに座ろうとした時、ふと窓を見ると雲行きが怪しいのに気づいて窓際に立つ
「雨……」
ムギが空を見上げ呟くと、ライもベッドから降りてムギの隣に来て一緒に空を見上げる。雲行きが怪しい空にベッドに座って紅茶を飲むホイップの方に振り向く
「ホイップ、雨降っちゃいそう。お買い物どうする?」
「アリエルさんに頼む?」
ライとムギがホイップに話していると、ポツポツと小雨が窓から入り、窓辺が濡れてライが慌てて窓を閉める
「降ってたなら、頼んじゃおうっかな。二人とも、ちょっとお片付けして」
「分かった」
ティーポットやカップを落とさないようにテーブルや机を壁側に移動する。少し寝室が広くなると、ライとムギがシオンを起こさないように同じベッドに座り、ホイップは広くなった寝室の真ん中に立つ
「ホイップ、シオンさんを起こさないようにね」
「大丈夫」
ライの忠告に返事をし、ゆっくりと目を閉じ、ふぅ。と一つ深呼吸をする。ライとムギがじっとホイップを見ていると、閉じた窓がガタガタと揺れ、机に置いていた本が勝手にバラバラとページがめくられる。ライとムギにもよそ風よりも強い風が何処かから吹いて、二人の髪がユラユラと揺れ、シオンが使っている布団も少し揺れ る
「ちょっとホイップ」
ライがホイップに声をかけると、風が止み、ホイップが閉じていた目を開け足元に目線を向けた
「アリエルさん、お話良いですか?」
と、ホイップが寝室の床に向けて話しかける。ライとムギがベッドから降り、ホイップの側に行くと広げた寝室の床からアリエルの姿が映しだされていた
「あら、ライとムギも一緒なのね。どうしたの?」
「アリエルさん、雨が降ってきてお買い物に行けないの」
「そうなの。シオンさんも寝ているから、行けなくて困っているの、どうしよう?」
「……シオン?」
急にアリエルとは違う知らない声が聞こえてきて、ライとムギがビクッと驚きお互いぎゅっと抱きしめ合い、ホイップも少し後退りする。三人の様子に気づいたアリエルが困ったように笑いながらほんの少しため息をついた
「分かったわ、私が代わりにお買い物をしてくるから、ちゃんといい子で待っててね」




