素敵な思い出
寝ていたシオンが目を覚ます。ふぅ。と一息ついて、ゆっくりと辺りを見渡す。寝ていたはずのアリエルの家の寝室とは違う見知らぬ家の廊下に立っていることに気づいて、周辺を見渡し続ける
「シオン、ご飯もうすぐ出来るから」
背後から声をかけられ驚き振り向く。シオンの背後はアリエルとは違う見知らぬキッチン。その奥では一人の女性が手慣れた様子で食材を切っていた
「何、見てるの?早く座って」
女性が手を止め、キッチンの入り口で立っていたシオンに声をかける。慌ててキッチンの中にあるテーブルにある椅子に座ると、女性がお鍋からスープをお皿によそいだす
「今日はご馳走にしたの。シオンの好きなものばかりでしょ?なんでか分かる?」
女性がシオンに問いかけながら、スープをシオンの前に置く。赤いスープから覚えのある良い匂いが漂ってくる。スープを見つめているといつの間にかシオンの前には大量の温かい料理が並んでいた。女性がガタンと椅子を動かし、シオンの前に座る。シオンが、ゆっくりと顔を上げると女性の顔と見つめあい、向かいにいる女性がにこりと微笑む。その笑顔に見覚えのあるシオンがふぅ。と一つ息を飲む
「……カナメ」
「ねえ、シオン。最後の時は好きなものだと嬉しいものね」
カナメがクスッと笑いながら、目の前にある料理に目線を向ける。シオンもまた目の前に置かれていた料理に目を向けると、カナメが持ってきた大量の料理がいつのにかテーブルから溢れそうなほど大量の魔術書が置かれていた
「もー、ライ。違うじゃん、間違えてるよ」
「ムギだって間違えてる」
「二人とも間違えてるんだから、喧嘩しないの」
「でもホイップ……」
バタバタと騒がしい聞き覚えのある会話が聞こえる。目をゆっくりと開け、ゆっくりと目を動かし辺りを見渡した後、ゆっくりと体を起こす。隣のベッドに目を向けると、騒がしい原因の三人が座って本を持ち話していた
「あっ、起きた!」
一番最初に気づいたライが声を上げる。ライとホイップも声を聞いてすぐシオンのいるベッドに目線を向け、起きているのに気づくと、ベッドを降り、シオンに駆け寄る
「シオンさん、おはようございます」
「おはよう、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃなさそう?ボーッとしてる?」
返事をせず動かずにいるシオンを心配して、ライとムギが両隣に座る。ホイップは座らずシオンの前に立ち、顔色を見る
「ライ、ムギ。温かい飲み物用意してきて」
「わかったー」
二人一緒にホイップに返事をして、ベッドから降りる。パタパタと駆け足で飲み物を用意するために、寝室からキッチンへ向かう
「なんの飲み物がいいかなぁ」
「甘い飲み物にしよっか」
少し開けっ放しにしていた寝室に扉から階段を降りる時の二人の会話が聞こえてきて、ホイップがはぁ。とため息をつく
「二人とも甘いものばかり狙って……」
そう呟くと、まだボーッとしていそうなシオンに目線を向き直し、体調を見るため、顔を覗き込む
「シオンさん、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。ただ……」
ホイップとの話の途中、ふぅ。と一つ深呼吸をして目を閉じる。ゆっくりと目を開けると目の前にいるホイップを見た後、寝室にある開いた窓から見える空を見た
「夢で見たの、大切な思い出だったのかも。でも、とても昔な思い出」




