私の代わりに
その頃、ライとムギの授業を早々に終え、書庫に居たアリエルは、開けた窓から聞こえるライとムギの声と、バタバタと聞こえる足音に困ったようにクスッと笑っていた
「困ったわね……」
次第にホイップの声もだんだんと大きくなり、二階にいるアリエルまで聞こえてくる。会話を聞きながら椅子に座り直し少し背もたれ書庫を見渡す。目を閉じ、微かに聞こえる話し声に耳を傾けていると、カタンとすぐ側で物音が聞こえた
「お帰り。機嫌はどうだったかしら?」
閉じてた目を開き隣にある机を向けると、カナメの顔にぶつかって落ちたはずの本が机の上に置かれていた。アリエルが本を取りパラパラとページをめくる
「あら、美味しそうな料理ね。久しぶりに食べに行こうかしら」
そう言うと本を閉じ机に置くと、またバタバタと騒がしい足音が書庫の中に響き渡った
「アリエルさん!一緒におやつを食べませんか?」
「ホイップとシオンさんが美味しそうな果物を買ってたんですよ。食べましょう!」
アリエルを呼ぶ二人の声がどこからか聞こえてくる。書庫の入り口の方に目線を変えると、机の上に置いた本が独りでに浮かび、窓の方に向かって飛んでいく
「ちゃんと探すように、もう一度伝えに行ってくれる?」
アリエルが本に向けてそう言うと、窓から飛び足す寸前で止まっていた本がまた動き出し窓から外へ飛び出していった
「やっときたー。遅いよー」
リビングにいたライとムギがアリエルを見るなりすぐ駆け寄り声をかけ、手を持ちグイグイと引っ張る。ホイップがシオンの隣にある椅子を引き、アリエルがその椅子に座ると、隣のシオンに微笑む
「遅れてごめんなさい。まだ私の分のおやつはあるかしら?」
「ありますよ。用意しますね」
ホイップがアリエルに返事をするとお茶が入ったコップを置き、すぐキッチンへ向かっていった。リビングに残ったライとムギがお茶を飲むアリエルを見ながらまた話しかける
「アリエルさん、ずっと何してたの?」
「魔術書を探していたのよ」
「あったの?」
「いいえ、まだ……」
困ったように笑いながらライとムギに返事をする。ライとムギも顔を見合わせ少し首をかしげる。すると、アリエルが三人の様子を見ていたシオンを見た
「シオンさん、あれから本は見てない?」
「えっ……。いえ、見てないです」
急に話しかけられ少し焦りながらも答える。ライとムギが二人の顔を交互に見ながら会話を聞いていると、アリエルがコップに入ったお茶を飲み、ライとムギに向けて、にこりと微笑んだ
「そう。それなら、もし見かけたならちゃんと戻るように伝えてあげてね」




