記憶の欠片
「ライ、手を抜いちゃダメだよ」
「ムギだって、楽しようとしているでしょ」
ライとムギが家の前で遊びながら魔術の練習をする。追いかけっこをし、空を高くとんだり、木々の間を通り抜けたり、家の周りをグルグルと飛び回る二人を監視役のホイップが家の前ある椅子に座り、紅茶を飲みながら見守っている。二人にばれないように、ポケットに入れたお菓子をつまんでいると、シオンが家から出てきた
。玄関先でライとムギの様子を目で追いかけていると、手を振りシオンを呼ぶホイップと目があった
「おはようございます、シオンさん」
「おはよう……」
ホイップがもう一つあった椅子を引き、シオンに座るように手を添える。シオンが椅子に座ると、紅茶を淹れ、隠し持っていたお菓子を分ける。時折二人の前を通り過ぎていくライとムギに見つからないように、お菓子を頬張る。紅茶も一気に飲み干すと、ホイップがすぐおかわりを注ぐ
「ねぇ、あの二人はいつから魔術が使えるの?」
「物心ついた時からです。私が小さい頃から魔術を教えているんですよ」
「へぇ。じゃあ、あなたも魔術が使えるの?」
「はい。アリエルさんほどではないですが、一応。でも私は、魔術は使うよりも見る方が好きなので、教える時以外はあまり使いません」
「ホイップ!ちょっと来て!」
少し離れた場所からライがホイップを呼んだ。ムギも手を振りライと一緒にホイップを呼ぶ。呼ばれているのに気づいたホイップがシオンの手をつかんで少し引っ張る
「シオンさんも一緒に行きましょ」
「でも、私は……」
「魔術を感じれば、記憶が戻るかもしれませんよ」
「確かにそれはそうかもしれないけれど……」
「では、せっかくですから」
ホイップがグイッと強くシオンの手を引っ張り、二人を待つライとムギのもとに向かう。待っていた二人と合流すると、ムギが持っていた魔術書をシオンに差し出し、ライも持っている同じ魔術書をホイップに渡した
「今、この魔術を練習しているんですよ」
「シオンさんも読んでみますか?」
「ホイップ。ライ、ムギ」
シオンがムギが差し出す魔術書を受け取ろうとした時、突然アリエルの声が聞こえた。四人が声がした方に振り向くと、家の玄関先でアリエルがにこりと微笑んでいる
「そろそろお昼よ。お昼ごはんの用意、お願いできる?」
「わかりました。ライ、ムギ。行くよ」
ホイップの掛け声にライとムギがアリエルがいる玄関の方に走り出す。一歩遅れてホイップもアリエルの元に駆け寄る。しばらく話していると、家の中に入っていたホイップ達。その間にシオンもアリエルのいる玄関まで戻ってきていた。アリエルシオンが持つ魔術書を見て、その魔術書をつかんで取った
「あなたはまだ魔術も魔力も知らなくていいの。その方が助かる人がいるからね」




