ご機嫌な歌とスープ
ルノート村にあるシオン達が出会ったナタリアの店の八百屋から軒数離れた一軒家からご機嫌な鼻歌が聞こえる。黒髪の少女が長い髪をゆらゆら揺らし、大きな鍋に入った大量のスープをかき混ぜる。小皿に少しスープを入れ、ふぅ。と息をかけ味見をするとまた鼻歌を歌いはじめ、鍋に蓋をした
「鼻歌交じりはご機嫌な証拠って誰かが言っていたわね」
そう呟きながら、戸棚からパンを取り出す。テーブルの上にあるお皿に置いて、食器棚から深めのお皿も取り出し、鍋に入っているスープを注ぐ
「あなたの魔力は私じゃもて余すのね。困ったわ」
パンの隣にスープを注いだお皿を置く。椅子に座り、長い髪を縛ってパンを一つ取り、少しちぎってスープに少しちぎったパンをつけて食べた
「早く探しに来てほしいわ。シオン」
一方その頃、リビングのソファーでホイップと一緒に洗濯物を畳んでいるシオンが窓を見ていた。暗くなっている外を見て、服を畳もうとしていた手が止まる。ちょうど服を畳み終えたホイップも手を止め、シオンが見つめる窓を見る
「シオンさん、どうしましたか?」
「遅いから。心配しなくて大丈夫?」
「アリエルさんですか?」
「そう、もう暗くなるよ」
「アリエルさんは、魔術ですぐ帰ってこれるから大丈夫だよ」
洗い物を終え、リビングに戻ってきたムギがホイップの代わりに答える。ちょっと遅れてリビングに来たライもムギの話しに会わせるようにうんと一度頷く
「魔術で?」
「そう。私達よりも魔術がすごくて、呪文を唱えたらすぐに帰ってこれるよ」
「へぇ。便利だね」
「もしかしたら、シオンさんもそうだったかもしれませんよ」
「そうかな。そうだといいけれど」
持っていた服を畳みながらホイップの話に答える。三人がシオンの動きをボーッと見ていると、玄関の扉がカタンと開く音が聞こえた
「噂をすれば帰ってきた」
ライとムギが座っていた椅子から立ち上がり、パタパタと急ぎ足で玄関に向かう。ホイップとシオンは向かわずに、玄関から聞こえるライとムギの話し声を聞いていると、二人に手を引っ張れているアリエルがリビングにやってきた
「アリエルさん、おかえりなさい」
「ただいま。ちょっと遅くなったわね」
ホイップに返事をしながら隣にいるシオンに目線を向け、にこりと微笑む
「お食事を温めてきますね」
「ありがとう、ホイップ」
ホイップがキッチンへ向かうと、ライとムギも手伝うため一緒に向かう。リビングに残ったアリエルがまたシオンに微笑む
「遅くなって、ごめんなさいね」
「いえ、私は……」
アリエルに呟くように答えると、アリエルがテーブルの上に買い物袋を置いた。ガサガサと袋の音をたてながら袋から手のひらほどの赤く丸い果実を取り出した
「おやつを買ってきたわ。ご飯の後にみんなで食べましょう」




