傷ついても笑って
「こうでしょ、こうやって……」
「ムギ、違う。間違ってる」
「えー、間違ってるの?」
買い物からの片付けを終え、おやつも食べた後、家の前でライとムギの魔術の練習にホイップが付き合ってあげている。シオンとアリエルは用意した椅子に座り、テーブルの上に用意した軽食や飲み物を飲みながら三人の様子を見ている。楽しくはしゃいで練習をする三人を見ていると、ライとムギに指導を終えたホイップが戻ってきた
「シオンさんは魔術は使えますか?」
「……魔術?」
ホイップの質問にシオンが首をかしげる。隣にいるアリエルがフフッと笑って飲み物を飲むためカップに手を添えた
「そうです。ライとムギが練習しているような魔術です。使えそうですか?」
「わからない。でも、今は無理だと思う」
「そうですか。記憶が戻れば使えるようになるかもしれませんね」
一冊の本を一緒に見るライとムギを見ながら、ホイップとシオンが話をする。ホイップがアリエルとシオンの間に座り、魔術の練習を続ける二人を見守る。アリエルに飲み物をコップに注いでもらい、三人でお喋りを楽しんでいると、いつの間にか少し離れた場所にいるのに気づいたシオンが周辺を見渡す。キョロキョロと見渡すシオンに気づいたアリエルとホイップもライとムギを探していると、少し離れた草むらから二人の声が微かに聞こえた
「ライ、ムギ。どこにいるの?」
ホイップが二人を探すため名前を呼び草むらに近づく。シオンも椅子から立ち上がりホイップの後を追いかける。ホイップの声を聞き、駆けっこついでに走って戻ってきたライとムギ。と、突然ライが木の枝に足を取られて転んでしまった
「大丈夫?」
慌ててシオンとホイップが、ライとムギのもとに駆け寄る。右膝を少し擦りむいて、ライがしょんぼりしていると、少し遅れて駆けつけたアリエルが、ライの右膝の怪我を見て、地面に座るライの前に少し屈んでそっと擦り傷を隠すように手を置く。シオンがその様子を不思議そうに見ていると、右膝に当てていた手をそっと離す。すると、右膝にあったはずの擦り傷が綺麗に治っていた
「アリエルさん。ありがとう」
「どうしまして。怪我しないように魔術は使わなきゃダメよ」
「そうだよ。ライはドジなんだから気を付けないと」
「ムギだってそうでしょ。前だって」
「二人とも、ケンカはダメだよ」
ホイップの注意を聞いても、また楽しそうに走りたライとムギ。二人の後を追いかけるようにホイップも少し遅れて走り出した
「困ったわね」
走る三人の後ろ姿にアリエルがクスクスと笑う。その笑顔を見たシオンが、ふぅ。と一つ息を飲んだ
「確か、前にも……」
そうシオンが呟くと、アリエルがシオンを見て、にこりと微笑み、ゆっくりと立ち上がる
「ホイップ」
「はい。なんでしょうか」
ちょうど目の前を走ってきたホイップにアリエルが声をかける。足を止め、アリエルの言葉を待っていると、少し家から遠くまで走っていたライとムギも戻ってきた。アリエルがシオンや三人の顔を見た後、テーブルに戻り、飲み物を飲みきった三人分のコップを持ち、ついてきたホイップに向けてにこりと微笑んだ
「ホイップ、少し悪いけれど、ちょっと出掛けるわ。夕ご飯の準備よろしくね」




