↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻の瑕疵  作者: 朔來 織
~思緋紡ぐ鈍色の鎖~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/164

第七十二話 男は不器用、女は強し

「…………」


緋色が揺れている。


沙苗の掌。


小さな——

緋炎。


「……赦す、か」


「はい」


紅葉が緋炎を見る。


「綺麗です」


「そう?」


「はい!」


「……そっか」


沙苗が少し笑う。


「前も言ってたじゃん」


「え?」


「緋色が綺麗って」


「言いました!」


「じゃあ」


——フッ——


緋炎を消す。


「変わってないじゃん」


「違いますよ」


「何が?」


紅葉が笑う。


「前より」


「…………」


「沙苗姉さまの色です」


「…………」


沙苗が——

黙る。


「何それ」


「えへへ」


「意味分かんない」


「私には分かります!」


——パサッ——


朱禰が扇を開く。


「それでいいんじゃない?」


「朱禰さんまで」


「自分の色なんでしょう?」


「……そうだけど」


「なら」


——ザッ——


朱禰が歩き出す。


「他人に分かってもらう必要なんてないわ」


「…………」


「あなたが」


——トンッ——


「分かっていれば十分よ」


扇を肩へ乗せる。


「……うん」


——ザッ——


沙苗も歩き出す。


「…………」


——ザッ——


「…………」


足が止まる。


「沙苗姉さま?」


「…………」


沙苗が霧を見る。


灰色。

その向こう。


「……來」


「…………」


紅葉の顔から笑みが消える。


「蒐も」


「…………」


あたしを——

逃がした。


二人で。


あそこに——

残った。


「朱禰さん」


「何?」


「二人……」


——ギュッ——


沙苗が——

拳を握る。


「無事かな」


「さあ?」


「……え?」


沙苗が朱禰を見る。


「それ今言う!?」


「だって」


朱禰が扇で口元を隠す。


「知らないもの」


「心配とかないの!?」


「あるわよ」


「だったら!」


「でも」


朱禰が霧を見る。


「死んだとも思ってないわ」


「……っ」


沙苗が黙る。


「來はあれで」


朱禰の瞳が細くなる。


「随分としぶとい男よ」


「それは……」


——スッ——


沙苗が目を逸らす。


「そうだけど」


「蒐も」


「…………」


「口だけは達者でしょう?」


「それ関係ある?」


「五月蠅い男は」


朱禰が笑う。


「そう簡単には死なないわ」


「何その理屈」


「経験則よ」


「絶対嘘」


「…………」


紅葉が二人を見る。


「でも」


「?」


沙苗が見る。


紅葉は霧を見ている。


「來様も」


「…………」


「蒐様も」


少し——

考える。


「不器用ですから」


「は?」


「だって」


紅葉が指を立てる。


「沙苗姉さまを逃がして」


「…………」


「二人で残ったんですよね?」


「うん」


「それって」


紅葉が笑う。


「自分たちは大丈夫」


「……っ!」


「そう言ってるのと同じじゃないですか?」


沙苗が目を瞬く。


「……紅葉」


朱禰も——

紅葉を見る。


「……あなた」


「はい?」


「妙なところで」


——パチン——


扇を閉じる。


「男心が分かるのね」


「男心?」


「ええ」


「…………」


紅葉が——

考える。


「男の人って」


「…………」


「不器用なんですか?」


「…………」


沙苗と朱禰が——

顔を見合わせる。


「……ふっ」


沙苗が吹き出す。


「あははっ!」


「?」


「あははっ!そうね!」


朱禰も笑う。


「馬鹿で、意地っ張り」


朱禰が続ける。


「素直じゃなくて、すぐ無茶する」


「「それでいて、恰好つけたがる」」


沙苗と朱禰の声が重なる。


紅葉が——

首を傾げる。


「大変ですね?」


「「あははははっ!!」」


笑い声が響く。


沙苗が——

笑う。


腹の底から。


「ほんと」


涙を——

拭う。


「馬鹿ばっか」


「そうね」


朱禰が歩き出す。


「だから」


「……?」


「待っていればいいのよ」


「……うん」


沙苗が霧を見る。


何も見えない。


声も聞こえない。


「待つ」


紅葉も——

沙苗の隣へ。


「私も待ちます!」


「当たり前でしょ?」


「はい!」


——ザッ——


三人が歩いていく。


灰色は——

まだ晴れない。


典膳も倒していない。


失ったものも——

戻らない。


「…………」


それでも。


沙苗の手には——

朱色の首輪。


その隣には——

妹。


前には——

朱色の扇。


「……ねえ」


沙苗が二人を見る。


「何?」


「はい?」


「帰ったら」


少し——

考える。


「牛鍋食べよ」


「いいわね」


「食べたいです!」


「葱抜き?」


朱禰が笑う。


「…………」


沙苗の足が止まる。


朱色の首輪を見る。


「——うん」


——ギュッ——


「葱抜き」


「ふふっ」


朱禰が何も言わず笑う。


「楽しみです!」


——ダッ——


紅葉が先へ走る。


「紅葉!」


「はい!」


「走ると転ぶよ!」


「大丈夫です!」


「さっきまで消えかけてたでしょ!!」


「あっ」


——ベチャッ——


「「…………」」


「転んだわね」


「転んだね」


「転びました……」


「もう!!」


沙苗が駆け寄る。


「あははっ」


朱禰が笑う。


何も——

終わっていない。


泣いて。

怒って。

笑って。


また歩く。


それが——

須藤の女。


灰色の中を三人は進む。


あの馬鹿な男たちが——

帰ってくると信じて。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『輪廻の瑕疵』は、毎日18:00に更新予定です。

※本作は「カクヨム」にも重複投稿しています。


もし「沙苗と來のコンビが良いな」「先が気になる」と思ってくださったら、

評価、ブックマークで応援いただけると、執筆の大きな励みになります。


そして、もうひとつの物語——

『SOUL TR@DE』も毎日18:00更新中です。


和風怪異とはまったく異なる、

魂と市場を巡る近未来ダークファンタジー。


あわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。


今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。