表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その配信は【閲覧注意】~ダンジョン死亡配信録~  作者: にとはるいち
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/91

第79話 教会

 私たちは森の中を進んでいた。


 六層は、草原だけではなかった。少し奥へ入ると、背の高い木々が密集するエリアに変わる。


 枝葉の間から、淡い緑光がこぼれている。発光する苔が幹や岩にびっしりと張りつき、昼のような明るさを保っていた。


 足元には、見たことのない植物が群生している。

 透明な葉脈が浮かび上がるもの、わずかに青く瞬く花弁を持つもの。


「……ここ、本当にダンジョンなんだよね」


<コメント>

・異世界すぎる

・もう観光番組じゃん

・六層だけ雰囲気違いすぎ

・魔素濃そう

・普通に住めそうなんだが


 さらさら、と水音が聞こえた。


 少し進むと、川が流れている。


 地下水だろうか。澄んだ水が、岩を削りながらゆるやかに流れている。

 水面にも、発光する苔が漂っていた。


「この水を利用しているんです」


 アーロンが穏やかに言う。


「農作や発電用に。六層は思いのほか豊かな場所ですよ」

「……へえ」


 確かに、魔物さえいなければ、どこか平和な土地に見える。


 そのときだった。


 木々の上から、ばさり、と重たい羽音。


「っ!」


 巨大な虫型の魔物が一体、横から突進してきた。


 硬質な外殻。鎌のような前脚。人の胴ほどもある頭部。


<コメント>

・きた!

・やっぱ安全じゃない

・でっか

・虫型か

・戦闘!?


 反射的にハンマーを構える。


 だが――


 前に出たのは、盾の男だった。


 巨大な盾を地面に叩きつける。


 ガンッ、と鈍い衝撃音。


 虫の鎌が盾に弾かれる。


 その隙に、槍の女が踏み込んだ。


 空中を裂く鋭い一閃。


 虫の外殻の隙間を正確に貫く。


 魔物は短く震え、そのまま崩れ落ちた。


<コメント>

・強っ

・連携えぐ

・普通にプロ

・ヤヤコ出番なし!?

・手慣れてる!


 ……あっさり。


 私はハンマーを構えたまま、少しだけ拍子抜けする。


「六層の魔物は大人しそうに見えますが……」


 アーロンが、倒れた虫を見下ろしながら言う。


「今のように襲ってくるものもいます。穏やかそうでも、油断はできません」


「……そうだね」


 私は短く答えた。


 その言葉を、頭の中で反芻する。


 ――穏やかそうでも、油断はできません。


 その通りだ。


 にこやかな顔。丁寧な言葉遣い。

 この男が、どこまで本音を見せているのかは分からない。


 まったくもって、油断はできない。


 そんなことを考えていると、やがて森は途切れ、視界が開けた。

 小高い丘が現れる。


「あの先です」


 丘を越える。


 そして――


「……あれ?」


 思わず足を止めた。


 石造りの建物。

 高く伸びる塔。

 尖塔の先端には、十字にも似た意匠。


 六層の光を浴びて、淡く浮かび上がっている。


<コメント>

・教会だ

・ガチじゃん

・ダンジョンの中だよなここ

・違和感やばい

・どうやって建てたんだよ……


 丘の麓、川沿いには畑が広がっていた。

 整然と並ぶ畝。

 見慣れない作物。


 ローブ姿の人々が、静かに土を耕している。


 笑い声さえ聞こえた。


「……普通だ」


 ダンジョンの中とは思えない光景。


<コメント>

・畑あるのか……

・マジで生活してる

・やばい組織じゃないのか?

・普通すぎて逆に怖い

・ダンジョンで暮らせるんだ


 教会の中へ通される。


 内装は質素だった。


 石の床。

 簡素な木製の長椅子。

 装飾はほとんどない。


 祭壇の奥には、深い影が落ちている。


「思ったより地味だね」

「我々は贅沢を好みませんので」


 アーロンが微笑む。


「……さて、ヤヤコさん」


 静かな声。


「実は、教祖様が……つまり我々の代表が、あなたにお会いしたいと」

「……教祖?」


 コメント欄が一瞬で加速する。


<コメント>

・きた

・ラスボス?

・会うの!?

・絶対やばいだろ

・帰れヤヤコ


 私は、ゆっくりと息を吸った。


 六層。


 その中心。


 ダンジョン教団の頂点。


「……いいよ。会おうじゃん」


 穏やかそうでも、油断ならない。


 それは、きっと――


 ここにいる全員に当てはまる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ