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その配信は【閲覧注意】~ダンジョン死亡配信録~  作者: にとはるいち
第二部

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第63話 覚悟の差

 ゴブリンの群れが、通路を埋め尽くすように押し寄せてきた。


 数は、やはり多い。

 二十体を軽く超えている。


「……来ますね」


 ゲンゾーは冷静に言い、ステッキを構えた。


 先端が、淡く光る。


 次の瞬間、空気が震えた。


 ――音が、整う。


 まるで、見えない指揮者がタクトを振ったかのように。


 魔法陣が床に広がり、複数の光弾が正確な間隔で射出される。


 ゴブリンの先頭数体が、同時に倒れた。


「……ふーん、綺麗だね」


 思わず、そう口にする。


「褒め言葉として、受け取っておきましょう」


 ゲンゾーはそう言って、一歩下がる。


 その間に、私は前に出た。


 ハンマーを振り抜く。


 電撃が走り、ゴブリンの群れをまとめて吹き飛ばす。


<コメント>

・共闘きた!

・連携いいな

・ゲンゾー強くね?

・ヤヤコもキレてる

・これは撮れ高


 ゲンゾーは、決して前に出過ぎない。


 常に一歩後ろ。

 危険域に踏み込まず、正確に数を減らす。


 合理的。

 無駄がない。


 その戦い方自体は、間違っていない。


 だけど――


「……チッ」


 奥から、さらに音がした。


 ガサガサと、数が増える音。


 新たなゴブリンの群れが、通路の奥から流れ込んでくる。

 さっきより、多い。

 今日はゴブリン日和のようだ。


「敵の増援のようですね……」


 ゲンゾーの声に、わずかな焦りが混じった。


「想定外、ってやつ?」

「ええ。ここまでの数は、合理的ではない」


 彼は、即座に判断する。


「ヤヤコ君。ここは――」


 一歩、後退。


「――撤退すべきです」


 はっきりとした判断。

 迷いはない。


 ゲンゾーは、戦況を見切ったのだ。


「私は、引きます」


 そう言って、さらに距離を取る。


<コメント>

・逃げる?

・ゲンゾー下がった

・ヤヤコどうすんの

・ヤバくね?

・数多いぞ


 私は、足を止めなかった。


「……私は、行くよ」


 前に出る。


 ゴブリンの群れが、こちらに殺到する。


「無謀です!」


 背後から、ゲンゾーの声。


「生きて伝える意味を、捨てるつもりですか!」

「捨てないよ」


 私は、歯を食いしばる。


「ただ、死ぬかもしれない場所に、行くだけ」


 ハンマーを振る。


 一体、二体、三体。


 電撃が走り、身体の中から魔素が失われていく。


 呼吸が、荒くなる。


<コメント>

・ヤヤコ突っ込みすぎ

・魔素やばくね?

・止まれって

・覚悟決まりすぎ

・怖い


 腕が、重い。

 右肩が、軋む。

 それでも、止まらない。


 倒す。

 倒す。

 倒す。


 魔素が尽きかける。


 視界の端が、暗くなる。


 最後の一体を、ハンマーで叩き潰したところで――


 膝が、落ちた。


「……はあ……はあ……」


 呼吸が整わない。


 腕に、力が入らない。


 ――終わった。


 そう思った。


 ゴブリンの死体が、周囲に転がっている。


 全滅。

 やった。


 その瞬間だった。


 物陰から、影が跳ねた。


 ――小さい。


 ――気配が薄い。


 ラスト一匹。


 生き残っていたゴブリンが、短剣を振り上げて飛びかかってくる。


「――っ」


 体が、動かない。


 魔素も、体力も、残っていない。


 ヤバイ……間に合わない。


<コメント>

・後ろ!!

・まだいた!?

・ヤバい!

・避けろ!!

・あかん


 刃が、迫る。


 私は、ただ歯を食いしばった。

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