第35話 訃報
救命部隊とのいざこざがあってからの翌日。
いつも通りの深層配信中、短いネットニュースが、スマホに表示された。
『第五層にて、事故現場を撮影していた探索者配信者が、トラップにより死亡』
それだけだった。
名前もない。
映像もない。
続報も、特集もない。
コメント欄が、一瞬だけざわつく。
<コメント>
・え……
・あの配信の人?
・5層、普通に死ぬよな
・アリサの真似してた人かな
・やっぱ死ぬんだ……
私は、その流れを見ながら、何も言わなかった。
同情もしない。
弁明もしない。
否定も、肯定も、しない。
深層では、誰が先に始めたかも、誰の影響を受けたかも、何の意味も持たない。
踏み外したら、終わる。それだけだ。
でもそれは、すべての探索者に言えることだ。
もちろん、私も含めて。
配信の終盤、ひとつだけコメントが残った。
<コメント>
・アリサは、同じことにならないよな?
私は、一瞬だけ考えた。
そして、正直に答えた。
「……分かりません」
安全だから潜っているわけじゃない。
正しいから続けているわけでもない。
「覚悟のうえで、潜っています」
それ以上、説明はしなかった。
配信終了ボタンを押す。
画面が暗転する。
模倣は、どこかで終わった。
誰にも知られず、誰にも惜しまれず。
でも、私の配信は、まだ続いている。
――それでいい。




