表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その配信は【閲覧注意】~ダンジョン死亡配信録~  作者: にとはるいち
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/91

第18話 エコースライム

<コメント>

・wwww

・やっぱトレーナーつええ

・ひっくり返ってて草

・アリサざっこww

・前よりは進歩してる気がする

・こんな実力なの?笑

・またやられてて草


 視界がひっくり返る。逆さまのコメント欄が目に入る。


「はっはっはっ、まだ鍛錬が足らないな」


 私を投げ飛ばしたトレーナーが笑って言った。


 そう、今はカリキュラムの一部である対人格闘術の最中だ。

 私はトレーナーと組み手をして、気がついたら投げ飛ばされてしまい、あられもない姿で床にひっくり返っていた。


「……もう一度、お願いします」


 私は体勢を直して、トレーナーに言った。


「いいだろう!」


 スクールに加入してから一週間ほど経った。あれから、基礎的な鍛錬と格闘術をずっと続けている。


 初日よりは動きが良くなったそうだが、まだまだらしい。


「うげっ……!」


 またもや投げ飛ばされて、変な声が出た……。


「アリサ、今日はこの辺にしておくか?」

「はあ……はあ……、もう少しだけ、お願いします……」

「体の方は限界のように見えるぞ」

「でも……はあ……はあ……、撮れ高、が……」


 体力の限界と痛みで、その場に立っていられなくなった私は、ふらふらと座り込んだ……。


<コメント>

・まだ撮れ高とか言ってるよこの子……

・立ってられないやん

・トレーナー探索者としても相当強そう

・アリサ頑張れ

・体力ついたか?笑

・【悲報】アリサ、今日だけで10回も投げ飛ばされる

・うめき声助かる


 コメントに煽られているが、反応する気力すらない。


「さて、明日からは魔物との戦闘訓練に入る。訓練といっても、捕獲した本物の魔物と戦ってもらうから、油断はするなよ」

「分かりました、お願いします」

「もちろん、本当に危なそうな時は私も加勢するが、君は相変わらず自分が傷つくことに躊躇がないからな……心配だよ」

「……気をつけます。ただ、お願いがあるんです」

「なんだ?」

「私が本当に死にそうになっても、助けないでください。……死なないと分かってたら、盛り上がりませんから」

「そんなことを言うのは君が初めてだ……。まあ、いいだろう……君の価値観を尊重しよう」


 トレーナーはドン引きした様子で言った。


 こうして、この日の特訓はこれで終わった。


 翌日、ダンジョンの一区画を改造した訓練用の大きなエリアに案内された。


「今日は、エコースライムの群れと戦ってもらう」

 

 奥の方に進むと、大きな檻があった。

 檻の中には、緑色のスライムが大量にうごめいている。


「エコースライムって確か……」

「そう、音を操る厄介なスライムだ。攻撃力はそれほど高くはないが、音に惑わされているうちにじわじわダメージを与えられて、苦戦することも珍しくない」


<コメント>

・スライムちょっとかわいい

・今日から魔物との戦闘訓練か

・いよいよ本番って感じだな

・アリサ行けるか?

・元々スライム程度は倒せる実力あるでしょ

・エコースライム苦戦したことある

・スライムまみれで死ねクソ女


「今日の訓練は、これを全部倒すことだ。準備できてるか?」

「はい、お願いします」


 私は拳銃を握りしめて言った。緊張感が高まる。


「じゃあいくぞ」


 トレーナーが手元のスイッチを押すと、檻が開いた。


 スライムたちがうようよと檻の外に出てくる。


 先手必勝。私はスライムたちがまだまとまっているところに弾丸を一気に撃ち込む。スライムの内部には白い「核」があり、そこが弱点だ。核に弾が命中した個体が三匹ほど弾けて死んだ。

 全部で二十匹? いや、三十匹近くいるかもしれない。とにかく数を減らすことが最優先だ。


 襲撃されたことに気づいたスライムたちは、戦闘モードになったらしい。私の方に向かって、左右に跳ねながら襲ってくる。

 地面を跳ねるたびに、ぐちゃっという粘着質な音が聞こえてくる。

 回り込まれるとまずいので、常に距離を取りながら戦う。順調な駆け出しのようだった。


 周囲に注意を払いながら、襲いかかるスライムを淡々と撃ち殺していく。

 発砲音が何度も響き渡る。

 もう半分くらいは仕留めただろうか。辺りに緑色のネバネバした死骸が散らばっている。


<コメント>

・お、順調じゃん

・エコースライムは油断できない

・見せ場まだ?

・スライム触ると痛いのかな

・アリサ頑張れ〜

・スライムえっちだ……

・ヤバイやついて草


 このまま全部倒せるのだろうか? さすがに簡単すぎる気がする、と思ったその時だった。


 ぐちゃ、というスライムの鳴き声が首筋から聞こえた。まずい、いつの間にそんなところに!?

 急いで、手で振りほどこうとするが、そこで気づく。

 手にも首元にも、何の感触もない。

 そうか……! エコースライムが「音」だけを聞こえさせてきたんだ。音を操る能力というのは、こういうことか。


 首元に意識が向いた瞬間、数匹のスライムが飛びかかってきた。反応が遅れて避けきれない。

 腕でガードすると、スライムが腕に張り付いた。


「熱っ!!」


 熱さのような痛みが腕に走る。私はすばやく腕をスライムごと床に叩きつける。スライムの核が潰れたことで、腕についていたスライムは死んだ。

 この辺りの動きは格闘術の特訓のおかげか、スムーズに体が動いた。


<コメント>

・あぶねー

・音本物かと思った

・これは騙される

・動き良くなったか?笑

・危機一髪やな

・騙されてて草

・[¥3,000]もっと痛がってるとこ見せて


 しまった。今の動きで隙を見せたせいで、スライムたちに囲まれてしまった……。

 突破口を開くため、一匹のスライムに銃口を向けて撃とうとした時だった。


「アリサ!」


 私はその声に、動きが固まる。


 ルーシーの、声だ……。


「アリサ、やめて。私だよ……?」


 いや違う、ルーシーは死んだはずだ。


 これはエコースライムの能力だ。

 座学で学んだ通り、エコースライムは人の記憶から声を再生することもできる……知識としては分かっていたけど、実際にやられるとかなり効く。ルーシーの声は、特に私には……


<コメント>

・ルーシー!?!?

・ルーシーの声!

・マジかよ

・え、偽物だよね???

・これはヤバイ


 動きが固まった私に向かって、スライムたちがジリジリとにじり寄って来る。


「ルーシーは、死んだ!」


 私は叫びながら弾丸を放つ。しかし外れてしまった。


「違うのアリサ、私の魂がスライムに宿ったの……」


 ルーシーの声が返事をしてきた。

 スライムに魂が宿った……?

 そんなの考えられない。でも……もし本当なら、ルーシーがそこにいるということ……?


「そんなの……ありえない」


 私は言葉で否定はするけど、トリガーが引けない。


「アリサ、どうして私を助けられなかったの?」


 やめて。


「ねえアリサ、私、痛かったよ」


 やめて。


 こんなの、まやかしに決まってる。

 でも、たとえ魔物が作った偽物だとしても、ルーシーの声が聞けて嬉しいという気持ちが確かにある。

 体が硬直したまま、心拍数が上がる。


 ジリジリと、スライムの群れが近づいてくる。何をやってるんだ私は、早く動かなきゃ……


「私、アリサに会いたいよ」


 でも、ルーシーの声が、聞こえる。


「私、死ぬのは怖かったよ……」

「……」


 違う。


 急に、体が動いた。


「ルーシーはそんなこと言わない」


 私は、ルーシーの声真似をするスライムをすばやく撃ち殺した。


 死が怖い?

 そんなこと、ルーシーが言うはずがない。百歩譲って、彼女が怖がるとしたら「普通の死」だ。

 しょせんは、記憶の断片から適当なセリフを作り出してるだけだと気づいた。


 本物のルーシーなら、死なんて恐れない。


 私は残りのスライムも片付けた。ルーシーの声真似で悲鳴をあげたりしてきたけど、もう効かない。


 こうして、すべてのエコースライムを撃破した。


「よし、合格だ」


 遠くで見ていたトレーナーが言う。


 途中少し危なかったけど、なんとか今日の特訓をクリアできた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ