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Θέλω να πεθάνω
* * *
空に二つの月が浮かんでいる。
はるか上空は宵闇が深く、地上は月光により白く輝き、どこまでも続く岩肌は草原が生い茂っているのが見えた。
浮遊する体は軽やかに天空を横切って、吐き出す息が白く烟る。
眼下に、大きな猪に似た生物が、悠々と歩いているのが見えた。彼は背中に金色の大剣を携え、時折、こちらを振り仰いでは、厚い皮膚に覆われた瞳を、緩やかに瞬かせる。
彼と並行するように、翼の生えた白馬が中空を闊歩していた。彼が通る道は、白い輝きが月光に反射され、一つの橋であるかのように続いていく。
仲の良い彼らの笑い声が、地表近くからここまで響いていた。その声に混ざり名前を呼ぶ声がして、薄らと笑みを浮かべて滑空する。
幸福であった。
今まで生存してきた、どの瞬間よりも、幸福な時間だった。
願わくばこの先、永遠に続いてほしいと、何度も祈りを捧げた日々だった。
どれほど厳しく接しても、決して忘れてはならないと、その為に生きねばならないと、心に刻み続けた日々だった。
愛しい我が義子の幸せを。
ただずっと。
──ずっと、永遠に。
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