★第32話 ナジェスタからの手紙
親愛なるイルンスール様
この手紙が届くのは夏でしょうか、秋でしょうか。
毎年素敵な贈り物を有難うございます。
そちらの引っ越し先で入手したという神獣の糸で作ったという衣装や小物に、
最近親しくなった親戚の子からも羨ましがられて私の自慢になっています。
今、私は北方圏の大君主であるスヴェン族の大族長の都ヘリヤヴィーズに来ています。
私達が住んでいたシエイン高原に最近蛮族が出没し始めたのでお爺様から私にこちらに退避するよう申しつけられました。
こちらのスヴェン族の族長の家系が私の親類で、もうすぐ族長の孫娘の方と一緒に帝都に留学することになりました。
帝都の学院が開いているのは夏から秋となります。
いちおう冬と春も開放されているので学ぼうと思えば学べますが、私達は冬から春はヘリヤヴィーズに戻ってくる予定です。
ですからお手紙はこちらのヘリヤヴィーズ宛にお願いします。
そうそう、何で遊牧民の私が帝都の学院に入る事になったのかと疑問に思われているかもしれません。父である族長が高原地域の監視役である皇家のひとつドゥーカス家と協力関係を強化する為、婚約を取り付けてきたからです。
もちろん嫁ぐのは私です。
帝国貴族の一員になる為、帝都で彼らの慣習を学んで来いというわけです。
できたら貴女の近況も聞きたいです。
こちらのスヴェン族は冬は寒さが厳しいので、語り部達が口伝を子供たちに語って聞かせてやっていて何千年もそうして暮らしてきているので貴女が好きそうなおはなしもたくさん語り継がれています。
月の迷い子のおはなしなんて各地で出版されているので貴女もご存じかもしれません。
もしよかったらこちらで一緒に暮らしませんか?
そちらではあまり幸せな暮らしを送っていないとハンネさんからも聞いています。
スヴェン族は母系社会ですのでうちの氏族の女性たちものびのびと自由に生活しています。こちらには北方候のアヴローラお婆様がいますので、なんでしたら保護をお願いして貰うことも出来ます。
それではよろしくご検討ください。
貴女の心の友 ナジェスタより




