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森の娘と最後の騎士  作者: OWL
第二章 森の娘
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★第31話 辺境領主の息子②

今日も今日とてあいつは礼拝堂にいる。

礼拝堂に置いてある神像も随分増えてきた。

あいつの趣味であちこちから取り寄せているらしい。


ラリサの守護神、王国の守護神でもあるスーントゥルーフのものだけあればよさそうなものだが、そんなに熱心にあちこちの神々に何を願うというのだ。

今日は隣で同じように祈りながらちらりと横顔を見るといつもより少し声がよく通ったので耳を澄ませて何を呟いているのか聞いてみた。


「・・・絶対に・・・。あいつ・・・ラザフ・・・・・・許さない・・・人さらい・・・見つけ・・・この恨み晴らさで・・・絶対に・・・許さない。首を・・・」


なんだか物騒な事を呟いている。

人の事は言えんが礼拝堂で神に願う事か・・・?

エーヴェリーンの奴は最近あいつの事を聖女のようだとかなんとか妙にべた褒めしていたが、今のあいつの言葉は聖女とは程遠かったぞ。

難民のガキどもを引き取ってきた事件についてエーヴェリーンがごちゃごちゃいっていたが、俺からすれば正反対の印象しかない。疫病神とはあいつのことだ。

そういったらエーヴェリーンと喧嘩になった。

礼拝堂での日課の後、あいつが私有地みたいにしている森の奥に引きこもってエーヴェリーンもついていけないので妹は最近なにやら勝手に策動している。


ふんっ。妹のくせに本当に生意気になった。


まあ、エーヴェリーンが何をしようと無駄な努力だ。

そんなことより今はこいつを問いただす必要がある。

すっきりした顔で出て行こうとするので呼び止める。


「おい、お前。勝手にどんどん神像を増やしているようだが・・・アイラクーンディアの神像まで置いていいのか?あまり世間一般では褒められた神ではないぞ。何か恨みでもあるのか」


嫉妬や怨恨を司る神で神話でも神々の争いを引き起こした元凶ともいわれることがあり、信仰を公言するにはいまひとつ世間受けが悪い。

あいつの呟きが聞こえたのでつい言ってしまったが、王の一族としては盗み聞きしたと言われるのも誇りが許さないのでひとまず目についた神像の事を引き合いに出す。


「恨み?わたしの頭蓋骨砕いておいて恨まれる筋合いが無いとでもいうのかしらアルベルド」


あいつは、昔の話を引き合いに出した。


「その件は済んだ話だ」

「へぇ、そう?アルベルドにはアイラクーンディアの加護が宿っているように見えるけど」


ぐっ、・・・こいつ勘付いてやがる。

だが、その件はこちらは保留しているつもりだ。

こいつが俺のものになるなら忘れてやってもいい。


「お前の勘違いだ、済んだ話をぐちぐちいうな」

「貴方が聞いてきたんじゃない。ま、いいわ。今願ってたのはアルベルドの事じゃないから」


さすがに隣にいた俺への復讐を願っていたわけじゃないのか。


「じゃあなんだ」

「このわたしの顔を潰して、膝を砕いた男の事よ!」


めらめらと瞳を真っ赤にしてやがる。

父上からあいつはマナが暴走する特異体質で瞳にその状態が顕著に現れるが、そういう時はそっとしておいて回れ右しろと言われた。

しかしこいつは不愉快な奴だが、すまし面をやめて感情を露わにした時のこの瞳はなかなか美しいな。

ついまじまじと見てしまう。


「そういえば、お前がここに来た当初は随分顔が酷い事になっていたが、何かされたのか」

「何かも何も今言った通りよ。左目はよく見えなくなったし、具合が良くなったといってもハンマーでさんざんに砕かれた膝にはまだ小さい破片が残っているような気がするし、ずぇったいに許さないんだから!!」

「じゃあやっぱりアイラクーンディアを信仰しているのか」

「ふんっ、何か悪い?正当な怒りよ!わたしの体じゃお返ししてやることが出来ないから神様にお願いしてるだけじゃない。誰に咎められる筋合いもないわ、神聖な復讐よ!!願うくらい、いいじゃない」


こいつが怒気を露わにすると気温がぐんぐん上がる。


「あ、あぁそうだな。報復は正当な権利だな」


つい同意してしまうとあいつはころっと表情を変えて朗らかになった。


「なんだ、話わかるじゃない」


盗み聞きされたのはわかっているだろうにそのことは口にせずにこにこし始めた。忙しい奴・・・。

こいつの場合はアイラクーンディアだけを信仰している訳でなく多種多様な神を信仰していて平等に神々への敬意を示しているだけということで別に世間受けの良くない神への信仰を口にしても問題ないと開き直っている。

木を隠すには森の中というが、こういうやり方もあるのか。

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2022/2/1
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