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森の娘と最後の騎士  作者: OWL
第一章 森の獣
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第35話 世界の広さ

長くて覚えにくい名前のイーザンなんとか老師の魔術講義にはいまひとつ納得いかないことも多かったので進捗はよくなかった。

初歩からやるので言葉にして魔術を行使する方法から学ぶんだけれど、そこから馴染まない。

燃えよ、荒れ狂え、満たせ、塞げ、防げとかマナに命じて臨む形に変換するように、といわれてもなんだか偉そうでね・・・・・・。

より強い意思でマナを従わせることで強力な魔術の発現を産むというけどさ。

口に出して言うだけ言ってみるけれど、内心は納得いってないので発現しない。

火の魔術を使うのは避けた方がいいらしいので、水を操りたいけど駄目みたい。


魔女になりたいわけじゃないし、感情のままにマナを暴走させない方法、魔術の打ち消し方が学べればそれでいいかな。


わたしがあんまり乗り気じゃないのを察して、雑談しているうちに段々天文や地理の講義も混ざるようになった。

話好きの老人なので次々話が広がっていくのだ。

わたしも将来の事を考えるとそっちの方が助かる。

その分野の家庭教師はいなかったので父さんもそのままに任せることにした。


「まず、お嬢ちゃんは父上が管理している男爵領の広さを知っておるかな?」

「この丘にある屋敷から見える下の町と海岸の村と北にある森と南の方の農園地帯?」


トリオネス街道沿いにギィエッヒンゲンの中間にある森から南の方のいくつかの村ってくらいしかしらない。


「数値としては、ここからかの自由都市までは約200クビト。整備された街道なら馬車で半日。男爵領を貫く街道の長さは約250クビト。南北250東西60じゃから、なかなか大した広さじゃな」


どうやら思っていたよりここから南の方に領地は伸びていて、南北に広いらしい。


「お嬢ちゃんの足だと縦断するのに、鐘100つ分は歩き続けねばなるまい。お嬢ちゃんは自分が一日どのくらい歩けると思う?」


む・・・むむ、4つ分くらいかなあ


「この子の体力じゃ大きくなっても恐らく鐘2つか3つがせいぜいで、長旅ならそれも続くかどうかってところだね。膝がとても悪いんだ。とてもじゃないが毎日同じペースで歩き続けるのは無理だ」


お目付け役のレベッカ先生が見立てる。


「主治医の先生がいうのであれば、確かじゃろうな。では踏破するのに1、2か月と見積ろうか。男爵が仕えるこのディシア王国は広さは男爵領の約40倍じゃな。帝国の覇権下で存在している国は他に約200とギィエッヒンゲンのような自由都市連盟の都市群、遊牧民達の暮らす地域などがある。大雑把な考えじゃが全ての国家、地域を踏破しようとすれば数千年以上かかろう。それも帝国の土木工学の粋を結集して作った街道を通った場合で山岳地帯を徒歩で行けば考慮するだけ無駄というものじゃ」

「・・・・・・どうしてそんな話をするの?」

「世界の広さを教えたかったのでな。できるだけ簡略化して伝えてみたのじゃ。どうじゃ、なんとなく伝わったかの?」


はあ、故郷を探すのは諦めさせたいんだね。

別にそんな迂遠な説明の仕方しなくたっていいのに。


「違う、儂がいいたいのは当てもなく探す事、自力で徒歩で捜し歩くことの困難さを伝えたかったのじゃ、それもまだ話は終わっていない」


あれれ、違ったらしい。


「短時間であれば魔術で空に舞うこともできる。古代の魔術師には自らの姿を鳥に変える事ができたものもいるという。魔術についてはお嬢ちゃん自身が扱う事は難しそうじゃが、将来信用のおける魔術師が出来たら考えてみればよかろう」


なるほど、でも数千年をある程度短縮しても焼石に水のような気がする。


「ああ、そこで地域をどれだけ絞り込めるか問題となる。うんと小さい頃でも登山できたのであれば、記憶より故郷の山は低く小さかったのかもしれぬ。多少なりとも雪が降ったのであれば降雪地域を予め調べることもできよう」


でもめぼしい特徴の無い低い山とかちょっとした雪程度の地域なんてどこにでもありそうだし、どこにそんなに全国の詳細な資料があるっていうの。


「詳細な地図や気象情報は戦略情報でもあるので帝都の地理院が大陸全土の情報を収集しておる。大きな商会も会員内で情報を共有しておるが、帝国の持つ情報量には遠く及ばん。資料の閲覧が許されるようになれば何か気が付くこともあるかもしれん」


少しは希望あるのかな?


「すまんの、出来るだけ情報を与えてお主の判断材料を増やしてやりたかっただけで、見込みが薄いとは思っておる。特に船で長期間移動しておったのがな。この星にはこの大陸ほどの広大な土地は無いと学者は判断しておるが、ある程度大きな島は大陸外にもある。風俗から蛮族の土地出身ではなかろうからそこは省いてよいが」


驚いた、星の広さまで計算にいれるのか・・・・・・。人跡未踏の地もあるっていうのに、どうやって測るんだろう。


「儂は最先端の学問や情報から長年離れておるから、昔より研究は進んでいるかもしれぬ。お嬢ちゃんが体力に不安があるにも関わらず自力でなんとかしたいのなら情報を絞り込めるか試してみるのもよかろう」


なるほどね。将来、どこかに学びにいくのもいいか。

お医者さんと侍女つきじゃないと生活できそうにないけど。


お爺さんへの認識を少し改めてお礼をいう。


「有難うお爺さん、参考になったよ。かなり難しそうだけど、具体的に計画を練ることはできるようになるかもしれない。あんまり長生きできる気はしないから今生で辿り着けなくても、いつか来世でなら会えるかもしれないね」


正直な感想だけど、聞きようによっては別の意味にとれちゃうかも。

お爺さんはまた違った解釈をしたようだ。


「お主、終末教徒だったのか?」

「終末教?なにそれ」


聞いたことはない、宗教みたいだけど。終末の時代と関係あるのかな?


「ああ、現世での幸福を望まずに次に来ると予言されている終末の時代で新たな人生を歩もうという集団じゃ」


神話にある万物の礎、世界そのものとなった巨人ウートーから始まった神の時代、神が去って人の時代となった現世、やがて来るとされる終末の時代、そこで再会したいと思われたらしい。


「なんだ、違うよ。何度人生やり直しても会いに行くつもりってだけだよ」


勘違いを修正しておいた。

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2022/2/1
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