1話
目を覚ますと爽やかな風が吹く平原に立っていた。
平原スタートか、死角が多くてモンスターとのエンカウント率の高そうな森林とか薄暗くてやばいモンスターが出てきそうな洞窟とかよりマシか?
女神様が言うには東に向かっていけば森が見えてくるのでそこを抜ければ町が見えてくるらしい。
「えーと、太陽は地球と同じ軌道を描いているから日が昇っている方向が東だから…あっちか。」
太陽を頼りに歩き出す。
しばらくすると木々の生い茂る森が見えてきた。
「この森を抜ければ良いわけか。そんじゃ、サクッと抜けますか。」
木々が生い茂る森の中は日の光により思っているよりも明るい。
歩きながら思い出すのは女神様とのトレーニングの日々。
腕立て伏せや腹筋といった道具を使わないものやダンベルなどの道具を使ったものまで異世界の修行とは思えないような近代的なトレーニングにより俺はチート級の肉体を手に入れていた。
『さあ大和さん!トレーニングは始まったばかり!理想の体を目指して頑張れー!』
最初は思っていたのと違うといまいちやる気の出ない内容だったがチートが欲しいのも事実、半ばやけくそになり女神様とのトレーニングに打ち込んでいた。
しばらくして自分でもわかるほど鍛えられ屈強になっていく身体に感動を覚え始め、ますますトレーニングに夢中になっていき俺も女神様もおかしなテンションになっていた。
そして夢中で身体を鍛えて鍛えて鍛えまくっていたある日。
『力をつけるだけでは日常生活に支障が出てしまいます。これから大和さんには力加減の修行に入ってもらいます。』
『力加減?』
この時の俺は女神様の言うことをあまり理解できていなかった。
女神様は指を鳴らして目の前に机とガラスのコップを出し、どこから出したのか水の入ったらペットボトルを持つと。
『では大和さん。このコップに水を注ぐのでコップが倒れないようにしっかりと持っていてください。』
『はぁ、わかりまし『バキャン』た…?』
そう言っておもむろにコップを掴むとコップは音を立てて見るも無惨に砕け散った。
は?まてまて、俺は全然力なんて入れてないぞ!倒れないようにと言われたから気持ち強めに抑えたくらいだ!
理解不能な光景にフリーズする俺に女神様は告げた。
『力を入れたとも言えないような事でもあらゆるものを破壊する怪力、これが今の大和さんの力です。』
これはやばい。
ほんの少し押えただけでそれなりの強度があったはずのコップが砕け散るほどの馬鹿力、人の腕とか握ったらとんでもないことになるぞこれ。
『これほどの怪力はまさにチートと言えるでしょう。あとはこの怪力をうまく扱えるようになれば修行完了というわけです。』
『わ、わかりました』
冷や汗をかきながら頷いた。
そこからの修行はこれまでの筋トレから一転。
柔らかいもの壊れやすいものを破壊しないように扱う気の遠くなるような地味な修行が始まった。
アレだな、筋トレもきつかったけどこういう地道な修行っていうのもなかなか辛いものだ。
そうして安心して生活できるほどの力加減を覚えた俺は遂に異世界に旅立つ時が来た。
『お疲れ様でした大和さん。トレーニングはこれでおしまい、あなたは立派にチートを手に入れました。その肉体はあなたの努力によって獲得した正真正銘あなただけのものです。』
『女神様…何から何までありがとうございます。』
そのころにはすっかりトレーナー、じゃなかった女神様との厚い信頼関係が出来上がっていた。
今の俺はどこかの格闘ゲームに出てきそうな立派な筋肉を持った男へと成長を遂げていた。
『せっかくの異世界転生。やってみたいことやり尽くして天寿を全うしてみます。』
『ふふふ、あなたの活躍を楽しみにしていますよ。では、行ってらっしゃーい!』
こうして俺は異世界へと旅立った。




