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真説・うらしまの太郎  作者: 川端 茂
77/86

七-十

 岩の(かがみ)の前でトポスとミンクが、地上から送られる太郎の映像(えいぞう)(なが)めている。

「太郎を海の中に(さそ)い込む方法(ほうほう)とはね……。ショウさんは自信(じしん)ありげだったな。でも人間の慣習(かんしゅう)欲求(よっきゅう)を知らなきゃ、成功(せいこう)(むつか)しいぞ。」

 ミンクも疑心(ぎしん)暗鬼(あんき)だ。

「我々とは全く(ちが)う、(たち)(わる)い動物ですからねえ。」

 トポスは太郎が(だれ)(せっ)し、どう行動(こうどう)するのかを観察(かんさつ)し、ミンクはジョイやクンク、コロと頻繁(ひんぱん)に交信して太郎(たろう)以外(いがい)の人間が、どんな生活をしているのかを調(しら)べることにした。

 集まった情報(じょうほう)はアンコウのミンクと、ハタのマイスが整理(せいり)し、リュウビに報告(ほうこく)している。


「人間の習性(しゅうせい)幾分(いくぶん)見えてきました。(まね)いた太郎を長く滞在(たいざい)させるには、立派(りっぱ)な屋敷を建てなきゃなりません。もてなす役も必要(ひつよう)です。」

 リュウビはトポスに、太郎が気に入る屋敷を建造(けんぞう)するよう指示(しじ)を出した。さっそくトポスは作業(さぎょう)仲間(なかま)のタコとエイを集め、計画を(つた)えた。

「太郎はもちろんだが、リュウビ様も驚く、ものすごい屋敷を(つく)ろうぜ。」

 作業(さぎょう)仲間(なかま)気勢(きぜい)()げた。

 同時に人間の住処(すみか)を、細かく調べるようミンクに(たの)んだ。ミンクはイタチのクンクと、新たな偵察員(ていさついん)になったフクロウのジータに、差江(さえ)武家屋敷(ぶけやしき)や城の外部(がいぶ)内部(ないぶ)映像(えいぞう)を送るように指示(しじ)した。


 さまざまな角度(かくど)から見た映像(えいぞう)が、次々に(かがみ)に映し出された。そこにいる人間達の(ひょう)(じょう)や動きもに観察(かんさつ)できる。見る見る膨大(ぼうだい)情報(じょうほう)が集まり、人間が(この)む屋敷や生活(せいかつ)内容(ないよう)まで、把握(はあく)できるまでになった。

「食べて()んで(おど)って(さわ)ぎ、金銀(きんぎん)(うば)い合うなんて。おかしな動物だなあ。」

 凶暴(きょうぼう)なだけと思っていたトポスは、激しい物欲(ぶつよく)にあきれ(かえ)る。

 しばらく設計(せっけい)試行(しこう)を繰り返していたトポスは、計画(けいかく)した屋敷を鏡に(うつ)した。それは差江(さえ)の城と、その(うら)山中(さんちゅう)に建つ神宮(じんぐう)を合体した四層(よんそう)だった。


 鏡に(うつ)った屋敷を見たショウは、トポスの並外(なみはず)れた発想(はっそう)(りょく)に驚いたが、果たしてこんな美麗(びれい)な建物が、海底に建つのかを(うたが)った。

「何と大きくて、きれいなお屋敷じゃないですか。」

「そうだろうよ。内部(ないぶ)はもっとすごいぞ。人間という動物は、金銀(きんぎん)に目の色を変えて本性(ほんしょう)むき出しになるそうだ。リュウビ様の(ねら)いもそこにあるので、かなり派手(はで)工夫(くふう)しているからな。」

 トポスは内部(ないぶ)設計(せっけい)しながら、外部(がいぶ)を作っていたのだ。ショウは(おそ)れ入った気持ちで、鏡の中の屋敷をしばし(なが)めた。


「こんな色鮮(いろあざ)やかな材料は、どこで調達(ちょうたつ)するのですか。」

全部(ぜんぶ)この(へん)の物だぜ。屋根は緑藻(かいそう)()り合わせ、壁は西にある白砂(はくさ)、窓や欄干(らんかん)(べに)珊瑚(さんご)。屋敷の(ろう)には、砕いた貝殻(かいがら)を敷き()める。まだ間取(まど)りの細かな設計は未定(みてい)だがな。」

 立派(りっぱ)なものだ。この屋敷が完成したら、太郎は(ゆめ)のような日々を過ごすに(ちが)いない。建物の構想(こうそう)は、リュウビも承諾(しょうだく)している。

 これからリュウビの術やゼクスの力を借りながら、完成を目指(めざ)すと言う。

 エイが運んで来た多量(たりょう)の資材は、一旦(いったん)小さくして保管(ほかん)し、必要なときに(もど)して希望する形に加工(かこう)するよう、ゼクスに依頼(いらい)している。


 突然(とつぜん)海底(かいてい)一帯(いったい)に激しい振動(しんどう)が起こって、平原が大きく波打(なみう)った。多くの砂が()い上がり、暗い上空(じょうくう)に吸い()まれてゆく。

「おぉ、地揺(じゆ)れだ。これは大きいぞ。」

 トポスが(さけ)んだ。過去(かこ)に大きな地揺(じゆ)れがなかったのでマックも、エイ達も驚愕(きょうがく)し、右往(うおう)左往(さおう)している。

「鏡と岩は大丈夫か。」

 鏡の岩が(くず)れたら、この計画が大幅(おおはば)(おく)れる。

「大丈夫、(いわ)は変わりないです。」

 様子を見に行ったタコの声が聞こえた。

 二度(にど)三度(さんど)と続いた()れは徐々に小さくなり、砂が(しず)んで平原が見通(みとう)せるようになると、トポスが景色(けしき)見回(みまわ)して絶句(ぜっく)する。

 屋敷を(きず)予定(よてい)の場所が、ぽっかり沈下(ちんか)しているではないか。

「うっ、これはいかん。計画(けいかく)変更(へんこう)だ。」

 トポスは、シオンとミンクに地盤(じばん)調査(ちょうさ)を頼み、リュウビに変更(へんこう)を相談する。


 しばらくして岩から北側(きたがわ)の平原に、敷地(しきち)()れた。

第一(だいいち)段階(だんかい)はうまくいったぜ、上から(なが)めてみるかい。」

 トポスに(うなが)されたショウが、高方(こうほう)から全体を(なが)めて目を(うたが)う。

 どれほどの屋敷を建てようというのか、長辺(ちょうへん)(じゅっ)(ちょう)(約一km)、短辺(たんぺん)が五丁もある広大な敷地が縄張(なわば)りされていたのだ。

 その(みなみ)(かど)におよそ二丁(にちょう)四方(しほう)確保(かくほ)した屋敷の基礎(きそ)土台(どだい)が作られている。屋敷は間取(まど)りもできている。

「あの()れで、だいぶ計画(けいかく)が変わったのさ。屋敷の(にわ)農園(のうえん)を作る構想(こうそう)だったが、それは()めて屋敷(やしき)以外(いがい)を、全部(ぜんぶ)農園(のうえん)にしたぜ。沈下(ちんか)した場所は()めずに、地下道(ちかどう)にするのさ。」

---よくもまあ。

「いつごろ完成するのでしょうか。」

「それほど(とお)くはない。現地(げんち)で必要な材料を加工(かこう)して、運ぶようにしているからな。」


 屋敷が立派(りっぱ)であるほど、太郎のもてなし役は完全(かんぜん)な人間でないと困る。リュウビ様のことだ、もてなし役の準備(じゅんび)順調(じゅんちょう)に進んでいるだろうと、住処(すみか)へ向かう。

 リュウビは首元(くびもと)の傷が完治(かんち)し、体長(たいちょう)一丁(いっちょう)あった(りゅう)から、(もと)(たい)の姿に(もど)っていた。

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