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薬を飲み始めて、最初の周期。
思ったより、何も変わらなかった。
眠くなるかもしれないと言われたけれど
特に強い副作用もない。
「大丈夫ですよ」
そう言うと、悠さんは少しだけ安心した顔をする。
高温期。
体温は、いつもより少し安定している気がする。
グラフが、きれいだ。
「ほら、十一日あります」
見せると、悠さんは「へえ」と頷く。
「効いてるんじゃないか」
私も、少しだけ期待する。
効いてる、かもしれない。
予定日。
朝は来なかった。
一日目。
二日目。
ほんの少し、胸が浮く。
でも、前みたいに大きくは跳ねない。
どこかで、「薬飲んでるし」と思っている。
三日目の夜。
トイレで気づく。
赤。
声は出ない。
驚きも、落胆も、大きくはない。
「そっか…」
独り言みたいに呟く。
薬を飲んだからといって、すぐに変わるわけじゃない。
一回目だ。
まだ一回目。
リビングに戻る。
「来ました」
悠さんが顔を上げる。
「そっか」
「まあ、一回目ですし」
自然に言う。
慰めでもなく、強がりでもなく、本心。
「そうだな」
それで終わる。
シャワーを浴びながら、ふと考える。
少しだけ、期待していたかもしれない。
でもそれは、ほんの少しだ。
タオルで髪を拭きながら、基礎体温のアプリを開く。
高温期、十一日。
前より長い。
それだけでも、前進の気がする。
赤い印がつく。
それだけ。
まだ、痛くはない。
でも。
ほんのわずかに、
“薬を飲んでも来るんだな”
という事実が、静かに積もった。
自分でも気づかないくらいの、小さな削れだった。




