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十二月。


冷え込んだ朝。


布団の中で朱里は体温計をくわえたままじっとしている。


最近は目覚ましよりも

あの電子音のほうが先に聞こえる。


ピッ。


「十三日目です」


布団から顔を出して、嬉しそうに言う。


「高温期、十三日」


スマホを差し出される。


確かに、今月はきれいだ。


落ちていない。


「伸びたな」


「ですよね?」


目が明るい。


たった数日。


それだけで、こんなに違う。


薬が効いているのかもしれない。


「効いてますかね」


期待を隠さない声。


「かもな」


俺も、少しだけうなずく。


予定日。


朝。


いつもより少し早く、朱里が起きる。


トイレのドアが閉まる音。


しばらくして、水の音。


戻ってきた足音は、静かだ。


「来ました」


ぴったり。


一日も遅れない。


昨日まであんなにきれいだったグラフが、今朝で落ちる。


「そっか」


それしか言えない。


朱里はスマホを見ながら、少しだけ笑う。


「十三日あったのに」


責める声ではない。


本当に、ただの確認。


「惜しかったですね」


惜しい、と言えるのは、まだ余裕がある証拠だ。


でも。


朝の明るさは、もうない。


昨日までの軽い弾みが、きれいに消えている。


「伸びたのは事実だろ」


言うと、朱里は頷く。


「はい」


「前より良くなってる」


理屈だ。


分かっている。


朱里も分かっている。


それでも「はい」と返す。


その“はい”が、ほんの少しだけ薄い。


崩れてはいない。


泣きもしない。


ただ、


十三日という数字が

思っていたより意味を持っていたことが分かった朝だった。




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