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日が落ちるのが、早くなった。


遥花さんたちの家に着くと

玄関の向こうから勢いよく足音がする。


「きた!」


はっきりした声。


髪も伸びて、頬の丸みが少し取れて

目がしっかりしてきた。


「あかりちゃん」


ちゃんと私を見て笑う。


その笑顔に、胸の奥がきゅっとする。


しゃがむと、迷いなく抱きついてくる。


重い。


ちゃんと、子どもの重さ。


「大きくなりましたね」


「もうすぐ二歳ですからね」


湊さんが笑う。


遥花さんはキッチンから「早いよね」と返す。


早い。


本当に。


去年はまだよちよち歩きだった。


その前は、抱っこされて眠っていた。


時間は、ちゃんと進んでいる。


帰り道。


風が少し冷たい。


踏み出してから、一年半。


澪花ちゃんが歩けるようになった時間と、ほとんど同じ。


出来ない、とは思っていない。


でも、


“まだ来ていない”時間が、少しだけ長く感じる。


焦り、というほどではない。


ただ、


世間の基準、みたいなものが頭をよぎる。


一年経っても出来なければ、受診を検討。


どこかで読んだ言葉。


二十五歳。


若いと言われる年齢。


でも、若いからこそ

何もしないでいいのかも分からない。


「悠さん」


歩きながら声をかける。


「ん」


「病院って……行ったほうがいいんでしょうか」


自分でも、驚くくらい落ち着いた声だった。


深刻ではない。


泣きそうでもない。


ただ、確認。


「検査とか」


付け足す。


「一般的には、一年くらいで受診って聞きましたし」


出来ないと思っているわけじゃない。


でも、“正しい順番”を踏んでいるのか、少し気になる。


悠さんはすぐに否定しない。


少しだけ考える。


「行きたいのか?」


静かな問い。


「知っておくのは悪くないかなって」


もし何もなければ、それで安心できる。


それくらいのつもり。


悠さんは小さく頷く。


「行くなら一緒に行く」


短い言葉。


それで、十分だった。


空気が冷えている。


秋の匂いがする。


“そのうち”が、少しだけ具体的になった。


それだけの、提案だった。




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