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ドラッグストアの棚の前で、少しだけ立ち止まる。
妊娠検査薬の隣。
その横に、小さく並んでいる。
排卵日予測検査薬。
思ったより、普通に売っている。
特別な人が買うもの、という感じはしない。
“より確実にタイミングを”。
書いてある文言は、どれも軽い。
まだ一年。
焦っているわけじゃない。
でも、分かるなら分かったほうがいいかもしれない。
「まあ、確認するだけ」
小さく呟いて、カゴに入れる。
少しだけ、どきどきする。
帰って、箱を机の上に置く。
悠さんが気づく。
「何それ」
「排卵日が分かるやつらしいです」
「へえ」
箱を持ち上げて、裏を見る。
「そんなのあるのか」
「便利ですよね」
あくまで明るく言う。
「別に焦ってるわけじゃないですけど」
先に言ってしまう。
悠さんは小さく笑う。
「焦ってるとは思ってない」
その言い方が、少し安心する。
「合ってる日が分かれば、楽かなって」
自分で言って、ちょっと可笑しくなる。
「作戦か」
「効率です」
ふざけた調子で返す。
深刻じゃない。
ただ、ちょっと賢くなった気分。
その夜、説明書を読む。
思ったより単純だ。
線が出たら、排卵が近い。
数日、続けて使う。
次の周期から使ってみよう。
少しだけ確率を上げてみよう、くらい。
排卵検査薬の箱は、引き出しの奥にしまわれた。
必要になったら出す。
それくらいの、軽さだった。




