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最近、子どもの話が増えた。


増えたと言っても、露骨じゃない。


「今日は絵本の読み聞かせをしたんです」


「遥花さんから写真きてました。見ました?」


「この靴、小さくて可愛いですね」


欲しいとは言わない。


羨ましいとも言わない。


でも確実に、目に入る時間が長い。


焦っているわけじゃないのは分かる。


ただ、自然に視界に入ってきているだけだ。


風呂上がりまだ髪が少し湿っている朱里が

スマホを見ながら言う。


「澪花ちゃん、今日初めてちゃんと笑ったらしいです」


「そうか」


「写真、ほら」


画面を向けられる。


小さい顔が、確かに少しだけ口角を上げている。


「分かるか?」


「分かりますよ」


笑っている顔が、嬉しそうだ。


そこで、ふと気づく。


俺の中で、もう想像が具体的になっている。


もし、だったら。


その写真の代わりに、俺のスマホに入るのは。


隣でそれを見て笑うのは。


「朱里」


「はい?」


顔を上げる。


いつもの返事。


一拍、間が空く。


言葉を選ぶ時間。


「……作るか?」


「え」


「子ども」


衝動じゃない。


思いつきでもない。


ただ、今なら自然だと思った。


朱里は固まり、数秒瞬きだけが増える。


「あ、えと……そりゃ、いつかはとは思ってますけど……」


視線が少し泳ぐ。


「私、まだ社会に出たばっかで……」


正直な声。


無理に喜ばない。


現実を見る。


それが朱里だ。


「俺がいるだろ」


自分でも驚くくらい、すんなり出た。


強がりでもなく、背伸びでもない。


ただ事実として。


朱里が、少しだけ息を止める。


「……ん……です、ね……」


小さく笑う。


でも、さっきまでとは違う。


戸惑いと、嬉しさと、怖さが混ざった顔。


「少し、考えてみます」


前向きな声。


それだけで十分だった。


無理に今すぐじゃない。


ただ、足並みが揃った。


半歩。


ようやく、同じ方向を向いた。




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